ユルリ島

ユルリ島の概要

ユルリ島は、北海道根室市の昆布盛から南東に約2.6kmに位置する無人島で、面積約200ヘクタール、周囲は約7.8キロメートルです。この島は、アイヌ語で「鵜の居る島」を意味する“ユルリ”の名を持ち、海鳥の繁殖地としての重要性を有します。島は海抜43.1メートルの断崖に囲まれた平坦な台地状となっており、その中心部には約1万4000年前に形成された高層湿原があります。この湿原では、さまざまな希少植物が生育しており、特に北方系海鳥の営巣地として知られています。

生態系と自然環境

ユルリ島は、エトピリカやチシマウガラス、ケイマフリといった北方系海鳥の集団繁殖地であり、1982年に国指定の鳥獣保護区となりました。また、北海道からは天然記念物にも指定されており、人の手が入らないため自然環境が原生のまま保たれています。この島の生態系の豊かさは、特に植物に関する研究においても大きな関心を集めています。

地形と地質

ユルリ島の地形は北側に標高40メートルの平坦面が広がっており、南側には30メートルから20メートルの平坦面があります。内部には高層湿原があり、いくつかの小川も流れています。島の基盤は根室層群に属するユルリ累層で、火山円礫岩や溶岩から成り、その上に更新世の海岸段丘堆積物や完新世の風成火山灰層が被さっています。

ユルリ島の歴史

ユルリ島は古くから船の停泊地として知られており、文化年間以前にはアイヌ民族によって住居が存在したとされています。江戸時代には、航路の安全を図るために金刀比羅神社が建立され、明治時代には昆布漁が行われました。大正時代には馬の放牧が行われ、その歴史は約100年にも及びます。1971年には人が去り無人島となり、野生化した馬たちだけが残されました。

植物と生態系の保護

ユルリ島は、低地の沢沿いにヤナギの小郡生地が見られ、島全体では約300種近い植物が生育しています。特に特徴的なのは白花品種の多様性で、ユルリ島では多数の白花植物が観察されています。高層湿原に生息する植物は、生物多様性保全において極めて重要であり、保護活動が行われています。

最近の調査では、野生化した馬の影響が生態系に与える影響が懸念されていますが、馬の数は徐々に減少しており、環境の回復が期待されています。

環境保全活動

ユルリ島では、ドブネズミなどの外来生物による海鳥への影響が指摘されており、駆除活動が実施されました。これにより、海鳥の個体数が回復傾向にありますが、馬に対する影響も懸念されています。島の観望ポイントとしては、根室市内の高台や落石ネイチャークルーズからの観察が可能です。

ユルリ島の文化的な意義

ユルリ島は、写真家岡田敦による作品や書籍『エピタフ 幻の島、ユルリの光跡』などで知られ、その魅力が広く認識されています。ユルリ島は、自然環境と文化が交錯する重要な場所として、多くの人々に魅力を提供する存在です。

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