エトワール (オペラ・ブフ)

エマニュエル・シャブリエのオペレッタ『エトワール』

『エトワール』（仏: L’Etoile）は、19世紀フランスの作曲家エマニュエル・シャブリエが作曲した全3幕のオペラ・ブフ（オペレッタ）です。1877年11月28日にパリのブフ・パリジャン座で初演され、『星占い』または『お星様』という邦題でも知られています。フランス語のリブレットは、ウジェーヌ・ルテリエとアルベール・ヴァンローによって書かれました。

作品の概要

『エトワール』は、シャブリエが初めて上演した舞台作品であり、未完のオペラ・ブフ『フィッシュ=トン=カン』の一部を転用しています。台本作家のルテリエとヴァンローは、シャルル・ルコックやオッフェンバック、アンドレ・メサジェなどのオペレッタも手掛けています。

シャブリエの軽妙な音楽は、オッフェンバックのオペラ・ブフの伝統を受け継ぐもので、初演後は好評を博しました。しかし、著作権料の関係で50回以上のロングランとはならず、48回で打ち切られ、作品は一時埋もれてしまいます。シャブリエは本作を機に、オペラ・ブフという形式を独自の完璧さと洗練の度合いにまで高めました。

ドビュッシー、ラヴェル、レイナルド・アーン、プーランク、ストラヴィンスキーなど、多くの作曲家がシャブリエを称賛しています。特にレイナルド・アーンは、「シャブリエの『エトワール』は、すべての芸術家の精神につきまとっている。このフランスのオペレッタの繊細な真珠には、シャブリエの滑稽味と詩的情熱が、気品と優雅さと音楽的豊かさで飾られている」と賛辞を寄せています。

初演とその後

アメリカ初演は1890年8月18日にニューヨークで『メリー・モナーク』として翻案され、イギリス初演は1899年1月7日にロンドンのサヴォイ劇場で『ラッキー・スター』として翻案されました。フランスでは、ブフ・パリジャン座での公演の後、1941年4月19日にパリオペラ＝コミック座で復活上演されています。

日本初演は、2009年10月23日に東京オペラプロデュースによって大田区民ホール・アプリコ大ホールで行われました。

上演時間と楽器編成

上演時間は、序曲が約7分、第1幕が約35分、第2幕が約35分、第3幕が約27分です。

楽器編成は以下の通りです。

木管楽器: フルート2（2番はピッコロ持ち替え）、オーボエ1、クラリネット2、ファゴット1
金管楽器: トランペット2、ホルン2、トロンボーン1
打楽器: ティンパニ、バスドラム、トライアングル、シンバル、グロッケンシュピール
弦5部

あらすじ

物語は、第36王国という架空の国を舞台に繰り広げられます。

序曲

「串刺しの刑」の合唱、「星のロマンス」、「美しい王女を」の合唱などのテーマで構成された、軽妙な楽曲です。

第1幕

第36王国の王ウフ1世は、国王聖名祝日に罪人を「串刺しの刑」にかけることを楽しみにしています。王は変装して罪人を探しに街へ出ますが、なかなか見つかりません。宮廷星占い師のシロコに運勢を占わせると、王とラズリは星で結ばれており、一方が死ぬともう一方も一日後に命を落とす運命だと告げられます。王は串刺しの刑を中止し、ラズリを王宮に招待することにします。

第2幕

王宮に招かれたラズリは、恋する女性のもとへ旅立ちたいと願います。そこへ、隣国のマタカン国からエリソン大使が、ウフ1世の許嫁であるラウラ王女を連れて城を訪れます。ラズリはラウラに恋心を抱いており、彼女がエリソンの妻だと知って落胆します。王はエリソンを逮捕しようとしますが、シロコは外交上の理由で逮捕は不可能だと告げます。ラズリとラウラは互いの気持ちを確かめ合い、王宮から逃げ出す計画を立てます。

第3幕

ラズリは銃で撃たれてしまいますが、奇跡的に一命を取り留めます。王はラウラと結婚して世継ぎをもうけようとしますが、ラウラは拒否します。シロコは時計を遅らせて王を欺き、死の時間が迫っているように見せかけます。しかし、王は死なず、星占いがデタラメだったことが判明します。警視総監がラズリを連行してきて、王はラウラをラズリに譲り、大団円を迎えます。

主な全曲録音・録画

[参考文献]に記載

参考文献

『ラルース世界音楽事典』福武書店刊
『オペレッタ名曲百科』永竹由幸 (著)、音楽之友社 (ISBN 978-4276003132)
『オックスフォードオペラ大事典』ジョン・ウォラック、ユアン・ウエスト（編集）、大崎滋生、西原稔（翻訳）、平凡社（ISBN 978-4582125214）
『新グローヴ オペラ事典』 スタンリー・セイデイ著、白水社（ISBN 978-4560026632）

外部リンク

エトワールの楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)

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