エドゥアール・ラロ

ヴィクトール・アントワーヌ・エドゥアール・ラロ（Victor Antoine Édouard Lalo, 1823年 1月27日 - 1892年 4月22日）は、19世紀フランスを代表する作曲家の一人です。また、優れたヴァイオリン奏者、ヴィオラ奏者でもありました。現在のフランス北部、リールの街で生まれました。特にヴァイオリンと管弦楽のための作品である「スペイン交響曲」（ヴァイオリン協奏曲第2番に相当）や、チェロ協奏曲は、今日でも演奏機会が多く、広く愛されています。また、オペラ『イスの王様』は全曲の上演は稀ですが、その色彩豊かな序曲は管弦楽曲として親しまれています。

経歴

ラロ家は、祖父の代までスペイン、特にバスク地方にルーツを持つ家系でした。エドゥアール・ラロ自身はフランスのリールに生まれ、リール音楽院で基礎的な音楽教育を受けました。1839年にパリへと移り住み、公的な音楽教育機関であるパリ音楽院ではなく、個人的な指導者から学びました。ヴァイオリンを著名な教師であったアブネックに、作曲はシュールホフらに師事しています。彼は生涯を通じてパリ音楽院とは、学生としても教員としても直接的な関わりを持つことはありませんでした。

作曲家としての活動は1845年から始まりましたが、当初は順風満帆ではありませんでした。1848年から1849年にかけて数曲の歌曲を出版するものの、成功には至らず、その後試みた室内楽作品も同様の結果に終わりました。これらの初期の挫折により、ラロは一時的に作曲から距離を置くことになります。

しかし、音楽活動自体は続けており、1855年には仲間たちと弦楽四重奏団を結成し、ヴィオラ奏者として演奏活動を行いました。この経験は後の彼の作品、特に室内楽への深い理解と愛情に繋がったと考えられます。作曲への情熱が再燃したのは、1865年にアルト歌手と結婚したことが大きなきっかけとなりました。妻の励ましが、再び彼を創作へと向かわせたのです。

キャリアにおける決定的な転機は、当時屈指の人気を誇ったヴァイオリニスト、パブロ・デ・サラサーテとの出会いでした。1874年、ラロは自身の《ヴァイオリン協奏曲第1番ヘ長調》作品20をサラサーテの独奏により初演し、これが大成功を収めます。この成功を受けて、彼はサラサーテのために《スペイン交響曲》ニ短調作品21（ヴァイオリン協奏曲第2番）や《ノルウェー幻想曲》イ長調（ヴァイオリン協奏曲第3番に相当）といった作品を書き、これらもサラサーテによって初演され、大いに人気を博しました。これらの協奏曲作品の成功により、ラロは作曲家としての名声を確立しました。

ラロは非常に真面目な性格であったと言われています。その情熱は、特に室内楽の分野に注がれ、多くの優れた作品を残しています。

主な作品

ラロは多岐にわたるジャンルで作品を残しています。

管弦楽作品:
交響曲ト短調
ディヴェルティスマン
管弦楽のためのスケルツォ
ノルウェー狂詩曲

協奏的作品（独奏と管弦楽のための作品）:
ラロの協奏曲は特に有名で、今日でも頻繁に演奏されます。
ヴァイオリン協奏曲第1番ヘ長調作品20
『スペイン交響曲』ニ短調作品21（ヴァイオリン協奏曲第2番） - ヴァイオリンと管弦楽のための代表作。
『ロシア協奏曲』ト短調作品29（ヴァイオリン協奏曲第4番）
『ノルウェー幻想曲』イ長調（ヴァイオリン協奏曲第3番）
チェロ協奏曲ニ短調 - チェロの重要なレパートリーの一つ。
ピアノ協奏曲ヘ短調

室内楽曲:
ラロが生涯を通じて情熱を注いだ分野です。
ピアノ三重奏曲（第1番ハ短調作品7、第2番ロ短調、第3番イ短調作品26）
弦楽四重奏曲変ホ長調作品45
ヴァイオリンソナタニ長調作品12
ギターロ短調作品28
2つの小品作品14

オペラ:
フィエスク
イスの王様 - 序曲がよく知られています。
ジャックリーの乱（未完ですが、アルチュール・コカールにより補筆完成されました）

バレエ:
ナムーナ

ピアノ曲:
母と子

エドゥアール・ラロは、初期の苦労を経て、ヴァイオリニストのサラサーテとの協働によって作曲家としての地位を確立しました。特に協奏曲の分野でその独創性を発揮し、フランス音楽史において重要な足跡を残しています。その真摯な創作姿勢は、室内楽作品にも明確に表れています。

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