エドウィン・ウォーカー

エドウィン・アンダーソン・ウォーカーの生涯

エドウィン・アンダーソン・ウォーカー（Edwin Anderson Walker, 1909年11月10日 - 1993年10月31日）は、アメリカ合衆国の軍人であり、最終階級は陸軍少将でした。彼はその右翼的な思想と、リー・ハーヴェイ・オズワルドによる暗殺未遂事件によって、歴史に名を残しています。

軍人としての経歴

ウォーカーはテキサス州センターポイントで生まれ、1927年にニューメキシコ州のミリタリー・スクールを卒業後、アメリカ陸軍士官学校に進学し、1931年に卒業しました。第二次世界大戦では、イタリア戦線でカナダ・アメリカ合同の特殊部隊「悪魔の旅団」を指揮し、1944年8月にはコート・ダジュールのイエール島への降下作戦で、ドイツ軍守備隊を排除するなどの戦功を挙げました。

朝鮮戦争にも参加した後、アーカンソー州リトルロックのアーカンソー軍管区司令官に就任。この時期に、ドワイト・D・アイゼンハワー大統領の命令により、リトルロック中央高校の人種差別撤廃を実行しました。

1959年、第24歩兵師団長としてドイツに派遣されましたが、1961年にジョン・バーチ・ソサエティの右翼思想の文献を部隊兵士に配布したことで批判を浴びました。さらに、ハリー・S・トルーマン、エレノア・ルーズベルト、ディーン・アチソンを「明確にピンク（共産主義者）」と発言したことが報道され、ロバート・マクナマラ国防長官によって解任されました。その後、諮問委員会に召喚され、同年11月2日に軍を辞職しました。

政治活動

軍を辞職する前の1961年9月、ウォーカーは人種隔離が行われていたミシシッピ大学へのアフリカ系アメリカ人学生、ジェームズ・メレディスの入学に反対するデモを組織しました。翌年にはテキサス州知事選に出馬しましたが、予備選挙で敗退しました。

暗殺未遂事件

ウォーカーは、この頃からリー・ハーヴェイ・オズワルドの標的となっていました。1963年2月、「オペレーション・ミッドナイト・ライド」という反共産主義のツアーで伝道師たちと協力したことが新聞の一面を飾りました。

オズワルドはウォーカーを監視し始め、自宅や周辺の鉄道線路の写真を撮影しました。これは逃走経路を計画するためであったと考えられています。また、別名義でライフルを通信販売で購入しました。4月10日、ウォーカーが自宅の食堂にいたところ、オズワルドが約30メートルの距離から発砲しました。銃弾は窓枠に当たり軌道がずれ、ウォーカーは腕に軽傷を負っただけで済みました。

当時、捜査当局は犯人を特定できませんでしたが、後にケネディ大統領暗殺事件の捜査中にオズワルドの関与が明らかになりました。マリーナ・オズワルドは、夫が暗殺計画のメモを燃やしているのを目撃していましたが、警察への通報は、オズワルドが再び人を殺そうとした時点にしようと考え、メモを隠蔽しました。

AP通信社訴訟

ウォーカーは、自身の保守的な見解に対する報道に不満を抱き、複数の報道機関を名誉毀損で訴えました。その一つであるAP通信社に対する訴訟は、連邦最高裁まで争われましたが、ウォーカーは敗訴しました。最高裁は、公人が損害賠償を請求するには、報道機関に「実際の悪意」があったことを証明する必要があるという判例を示しました。

その他の出来事

1976年6月23日、ウォーカーはダラスの公園で公然わいせつ罪で逮捕され、罰金刑を科せられました。また、映画『五月の七日間』に登場する空軍将軍、ジェームズ・マットーン・スコットのモデルとされています。

ウォーカーは軍を退役せずに辞職したため、当初は年金を受け取ることができませんでしたが、1982年に年金受給権が復活しました。


ウォーカーは、その軍人としてのキャリアと政治活動、そして暗殺未遂事件を通して、アメリカの歴史に深く刻まれた人物です。

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