エドウィン・ハッブル

エドウィン・ハッブル：宇宙の謎を解き明かした巨人

エドウィン・パウエル・ハッブル(1889-1953)は、20世紀における最も重要な天文学者の一人です。彼の功績は、現代宇宙論の基礎を築き、私たちが宇宙を理解する上で革命的な変化をもたらしました。 スポーツマンとして優れた才能を持ちながら、天文学への情熱を生涯貫いたハッブルの波乱に満ちた人生と、偉大な発見の数々を紐解いていきましょう。

若き日の輝きと意外な経歴

1889年、ミズーリ州で生まれたハッブルは、幼少期をイリノイ州で過ごしました。学業よりもスポーツに秀で、高校時代には陸上競技で州記録を樹立するほどの活躍を見せました。その後、シカゴ大学に進学し、数学と天文学を専攻。大学時代もボクシングで名を馳せ、プロ転向を勧められた逸話も残っています。卒業後は、イギリスのオックスフォード大学で法学を学び修士号を取得。帰国後は法律事務所勤務や高校教師、バスケットボールコーチなどを経験するなど、多様なキャリアを積みました。

天文学への転身とウィルソン山天文台

第一次世界大戦中はアメリカ陸軍に少佐として従軍。戦後、シカゴ大学のヤーキス天文台で天文学研究に専念し、博士号を取得します。1919年、ジョージ・ヘールからウィルソン山天文台への招聘を受け、彼の研究人生における転機となります。当時世界最大の100インチフッカー望遠鏡を用いた観測は、ハッブルの業績を決定づけるものとなりました。

革命的な発見：系外銀河の存在

ハッブルは、それまで銀河系内の天体と考えられていた「星雲」の中に、銀河系外の銀河が含まれていることを発見しました。1924年に発表されたこの画期的な発見は、私たちの宇宙観を根本から変え、宇宙の広大さを認識させるきっかけとなりました。さらに、彼は銀河の形態を分類する独自の体系「ハッブル分類」を考案。現在でも天文学において広く活用されています。

ハッブルの法則：宇宙膨張の証拠

ハッブルの最も重要な業績は、「ハッブルの法則」の発見です。1929年、ミルトン・ヒューメイソンとの共同研究で、銀河の距離と後退速度（遠ざかる速度）の間に比例関係があることを明らかにしました。この発見は、宇宙が膨張しているという決定的な証拠となり、宇宙論に大きな衝撃を与えました。 ハッブルの法則は、ビッグバン理論の基礎となり、現代宇宙論の礎を築いたと言えるでしょう。ただし、ハッブルが用いたセファイド変光星の明るさの計算に誤差があったため、ハッブル定数の値には修正が必要でした。

その他の業績と晩年

ハッブルは、小惑星の発見や、天文学に関する著書の出版など、数々の業績を残しました。第二次世界大戦中には再びアメリカ陸軍に入隊し、弾道学の研究にも貢献しています。1949年には、パロマー天文台の200インチヘール望遠鏡が完成し、その最初の利用者となりました。

1953年、心不全のためカリフォルニア州で亡くなりました。彼の遺言に従い、妻グレースは葬儀を行わず、埋葬場所も公表しませんでした。現在でも、彼の墓の正確な位置は不明です。しかし、彼の業績は、ハッブル宇宙望遠鏡を始めとする様々な形で、現代天文学に刻み込まれ、未来へと受け継がれていきます。 1999年には、『LIFE』誌が選ぶ「この1000年で最も重要な功績を残した世界の人物100人」に選ばれています。

ノーベル賞受賞への期待と惜しまれる死

ハッブルは、ノーベル賞を受賞していません。しかし、彼の死後、ノーベル物理学賞の選考委員から受賞決定の知らせが届いたという説があります。この説の真偽は不明ですが、彼の偉大な功績は、ノーベル賞の受賞有無にかかわらず、現代天文学に不滅の足跡を残したことは間違いありません。

ハッブルの遺産

ハッブルの研究は、宇宙の膨張、銀河の進化、そして宇宙の起源といった、現代宇宙論の主要な問題に光を当てました。彼の発見は、天文学のみならず、物理学、宇宙論、そして私たちの宇宙観全体に多大な影響を与え続けています。彼の名は、ハッブル宇宙望遠鏡を始め、月面のクレーター、小惑星などにも冠されており、その功績は永遠に記憶されるでしょう。

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