エドワード・ポールトン

エドワード・バグナル・ポールトン：進化生物学への貢献

エドワード・バグナル・ポールトン卿(Sir Edward Bagnall Poulton, 1856年1月27日-1943年11月20日)は、19世紀から20世紀にかけて活躍したイギリスを代表する進化生物学者、動物学者です。オックスフォード大学ジーザス・カレッジで学び、その後、同大学の動物学ホープ教授として70年以上にわたり、研究と教育に尽力しました。

ダーウィン主義と自然選択説への貢献

ポールトンは生涯にわたって熱心なダーウィン主義者であり、自然選択を進化の主要な原動力として信奉しました。彼はダーウィン自身を深く敬愛していただけでなく、ネオダーウィニズムの提唱者であるアウグスト・ヴァイスマンの考えにも強い共感を抱き、ヴァイスマンの著作を英語に翻訳する活動にも参加しました。特に、ヴァイスマンの生殖質連続性に関する理論を支持しました。

1896年のダーウィンの業績に関する著作では、『種の起源』を生物科学における「比類なき偉大な研究」と称賛し、自然選択説の批判者ですら、やがてその重要性を理解するに至ると主張しました。これは、当時の一般的な見解ではありませんでしたが、現代の評価と一致する見解です。しかし、当時の遺伝メカニズムに関する知識の不足が、進化論の理解を阻む大きな障壁となっていたことも認識していました。

擬態研究とメンデル遺伝学との統合

1897年、ロンドン昆虫学会での議論を通して、多くの研究者が昆虫の擬態のメカニズムについて自然選択説を疑っていることを知りました。ポールトンは、自然選択説の支持者として、鳥類による捕食圧が擬態進化に重要な役割を果たすことを強調しました。当時、擬態のメカニズムについて、自然選択以外の外的要因や内的要因が説明として提唱されていたことを踏まえ、ポールトンは自然選択説の立場から議論を展開しました。

メンデル遺伝学の再発見は、進化論における重要なギャップを埋めるものとなりましたが、当初は自然選択説と矛盾するとの見方から、その重要性が理解されませんでした。オックスフォード大学の遺伝学教授であったレジナルド・パネットとの間では、長年に渡る論争が繰り広げられました。パネットは、中間型が存在しないこと、オスの擬態の欠如、多型擬態の存在、鳥類の捕食圧の証拠の不足などを指摘し、擬態は突然変異による飛躍的な進化の結果であると主張しました。

しかし、その後、鳥類による捕食圧の重要性が野外調査や実験によって確認され、小さな変異の蓄積が進化に寄与することも明らかになりました。多型擬態についても、生殖的隔離や中間型の絶滅によって説明できることがわかりました。これらの発見は、20世紀中頃に起こった現代的総合進化論の成立に大きく貢献しました。現在では、突然変異が遺伝的変異の供給源であり、自然選択がその変異の適応度を決定するという理解が定着しています。ポールトンの見解は、現代進化生物学の主流と大きく異なっていませんでしたが、パネットの疑問提起も、進化生物学研究の進歩に重要な役割を果たしました。

晩年と業績

ポールトンは高齢の81歳でイギリス学術協会の会長に就任し、会長講演で進化理論の歴史を概説しました。また、生物学的種概念のオリジナルな提案や、「aposematism（警戒色）」という用語の提案など、多くの業績を残しました。60年間で200以上の論文や著作を発表し、『The Colours of Animals』は彼の代表作として知られています。

受賞歴

1889年：ロンドン王立協会フェロー選出
1914年：ロンドン王立協会ダーウィン・メダル受賞
1922年：ロンドン・リンネ協会リンネ・メダル受賞
1935年：ナイト叙任
* 1937年：イギリス学術協会会長就任

ポールトンの研究は、ダーウィン主義の擁護、自然選択説の推進、そしてメンデル遺伝学との統合、擬態研究の発展などに大きな貢献を果たしました。彼の生涯と業績は、進化生物学の歴史において重要な位置を占めています。彼の研究は、現代の進化生物学研究にも大きな影響を与え続けています。

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