エドワード王の椅子

エドワード王の椅子

エドワード王の椅子（King Edward's Chair）は、イギリスの戴冠式で国王が即位する際に使用される象徴的な椅子であり、その制作は1296年にさかのぼります。この椅子は、エドワード1世がスコットランドのスクーン修道院から奪った「スクーンの石」（運命の石）を収めるために特別に設計された木製の肘掛け椅子です。椅子の名前は、エドワード懺悔王に由来し、かつてウェストミンスター寺院内に彼の廟があったことからこの名が付けられました。

椅子の歴史と制作

ジャンプしまして、先に進むとエドワード1世は、スコットランドの王たちがかつて使用していたこの石を手に入れ、その保管のために椅子を作らせました。この椅子は、名工ウォルター・オブ・ダラムの手によって、1297年から1300年ごろにオーク材で作られました。エドワード1世は最初は青銅製を考えていましたが、最終的には木製に変更しました。完成当初、椅子は金箔や色ガラスで美しく装飾されていましたが、現在ではその多くは失われています。歴史的にも価値のあるこの椅子は、現存する英国家具の中でも最も古い作品の一つです。

元々は戴冠式で用いられる意図はなかったものの、14世紀になると徐々に戴冠式でも使用されるようになり、1399年にはヘンリー4世の戴冠式でその使用が確認されています。1727年に椅子の脚を金箔のライオン像に取り替えられ、1821年のジョージ4世の戴冠式では脚部の一部が新しくされています。

戴冠式と椅子の役割

エドワード王の椅子は、歴代のイギリス王の戴冠式に不可欠なアイテムとして使われてきました。特に、1689年にウィリアム3世とメアリー2世が戴冠される際には、2つの椅子が必要とされ、メアリー2世用の新しい椅子も作成されました。このように、エドワード王の椅子は数世代に渡って重要な役割を果たしてきました。

19世紀に入ると、観光客が椅子に座ることができるようになり、多くの人々がその記念に落書きを行い、椅子は損傷を受けました。1914年には、椅子がサフラジェットの爆弾テロの標的にされ、一部が損傷しましたが、修復されました。また、椅子はオリバー・クロムウェルの時代や第二次世界大戦中に一時的に移動されるということがあったものの、基本的にはウェストミンスター寺院に保管されています。

最近の状況と保存

椅子は厳重に保護され、主にウェストミンスター寺院のセント・ジョージ礼拝堂に展示されています。2010年から2012年には専門家チームによって椅子のクリーニングと修復が行われ、2023年にはチャールズ3世とカミラ妃の戴冠式に向けたさらなる保存処理も進められました。また、スコーンの石がスコットランドに返還された際には、今後も戴冠式の際にはイングランドに戻されることになっています。

他の戴冠式用の椅子

エドワード王の椅子以外にも、国王と王妃用に用意されたチェア・オブ・エステートが存在し、戴冠式の重要な部分で使用されます。これらの椅子は多くの場合、毎回新たに作成され、戴冠式後には異なる場所に保管されることが一般的です。

このように、エドワード王の椅子はイギリスの王室の歴史と伝統を象徴する重要な存在であり、今もなおその威厳を保っています。

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