エバーグリーン航空17便墜落事故

エバーグリーン航空17便墜落事故の概要

1989年3月18日、フォートワース・カースウェル空軍基地を離陸したエバーグリーン航空17便（ダグラス DC-9-33F）が、離陸直後に貨物ドアが開くという異常事態に見舞われました。この事故により機体は制御不能となり墜落、乗員2名が命を落としました。

事故機と乗員

事故機

事故を起こしたダグラス DC-9-33F（機体記号：N931F）は、1968年に製造され、当初はKLMオランダ航空で運用されていました。その後、1976年にエバーグリーン航空が購入し、貨物機として運用するために改修が行われました。

乗員

機長は41歳の男性で、総飛行時間は7,238時間、うち同型機での飛行時間は1,938時間でした。機長は、離陸前に貨物ドアの警告灯を必ず確認する習慣があったと、複数のパイロットが証言しています。

副操縦士は39歳の男性で、総飛行時間は10,863時間、うち同型機での飛行時間は1,213時間でした。

事故の経緯

飛行計画

この日の17便は、アメリカ空軍の物資を輸送する定期貨物便として、オクラホマ州のティンカー空軍基地を起点に、テキサス州のダイエス空軍基地、ケリー空軍基地を経由し、フォートワース・カースウェル空軍基地に向かい、再びティンカー空軍基地へ戻るという飛行計画でした。フォートワース・カースウェル空軍基地では、空軍職員によって貨物の積載が行われました。

事故発生

コックピットボイスレコーダー（CVR）の記録から、17便の操縦は機長が行っていたことが判明しています。17便はカースウェル空軍基地の滑走路17から離陸を開始し、2時09分44秒に離陸決定速度（112ノット、207km/h）に到達、その2秒後には離陸速度（116ノット、215km/h）に達しました。離陸直後にメイン貨物ドアが開き、パイロットは緊急事態を宣言。機体は高度2,500フィート（760m）まで上昇しましたが、パイロットは右旋回で空港へ引き返そうとしました。

機長がダウンウィンド・レグを行っていた際に、貨物ドアが空気抵抗によって全開位置を超えて開いてしまい、機体に意図しないヨーイングとローリングが発生。機体は急速に左に傾き、機長は姿勢を回復することができませんでした。機体は左に傾いたまま墜落し、墜落地点は空港の北10マイル地点でした。

事故調査

国家運輸安全委員会（NTSB）が事故調査を実施。CVRの解析から、機長が副操縦士に離陸速度到達を告げた数秒後から、突然雑音が録音され始めたことが判明しました。このことから、機体前方にあるメイン貨物ドアが誤作動により開いたと推定されました。

調査の結果、副操縦士による貨物ドアの閉鎖が不適切だったことが判明しました。さらに、配線の不具合により貨物ドアの警告灯が誤作動を起こし、警報装置が無効化されていたことも明らかになりました。

NTSBの報告書では、事故要因として以下の点が挙げられました。

エバーグリーン航空の不適切な手順
マクドネル・ダグラスが、飛行中に貨物ドアが開いた際の対処方法を提供していなかった
連邦航空局が、貨物ドアの警報装置の仕様変更を義務付けていなかった

事故の教訓

この事故は、航空機の安全管理において、単なるヒューマンエラーだけでなく、機体構造上の欠陥、製造メーカーの責任、そして規制当局の対応の重要性を示す教訓となりました。特に貨物ドアの開閉に関する手順、警報装置の信頼性、そして緊急時の対応手順の徹底が不可欠であることを、改めて認識させる事故となりました。

関連項目

ユナイテッド航空811便貨物ドア脱落事故
アメリカン航空96便貨物ドア破損事故
トルコ航空DC-10パリ墜落事故

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