エマージェンシーブランケット

エマージェンシーブランケットとは

エマージェンシーブランケットは、非常に薄い素材でできた防風、防寒、防水シートです。災害時や遭難時など、通常の生活環境が失われた際に、毛布や布団の代わりとして使用されることを想定しています。ポリエステルフィルムにアルミニウムを蒸着させたものが一般的で、エマージェンシーシートとも呼ばれます。

類似品として、アポロ計画の技術を応用した保温断熱素材を用いたスペースブランケットがあり、こちらはアメリカ航空宇宙局の正式認定を受けています。

特徴と携帯性

折り畳んだ状態では手のひらサイズと非常にコンパクトで軽量なため、持ち運びが容易です。広げると全身を覆うほどの大きさになり、就寝時の寝具代わりや、防風、防水、防寒用のシートとして活用できます。ホームセンターやアウトドアショップ、100円ショップなどでも手軽に購入できるため、防災用品としてだけでなく、日常的に備えている人も少なくありません。世界各国の軍隊や救急機関でも採用されており、意識を失った状態の体温保持に高い効果を発揮します。

携帯性に優れ、安価で入手しやすい反面、いくつかの欠点も抱えていますが、費用対効果の高い防災用品として広く認識されています。アウトドアのバイブルともいえる書籍『コンプリート・ウォーカー』でも、必携グッズとして紹介されています。

多様な用途

主な用途は、就寝時に毛布の代わりとして使用することです。広告などでは「毛布数枚分の保温力」とうたわれることもありますが、実際には、シート自体の蓄熱能力はそれほど高くありません。防風・防水効果によって外からの冷気を遮断し、体温を反射することで保温効果を発揮します。また、体とブランケットの間の空気の層が温度を保つ役割も果たします。

その他にも、避難所などでプライバシーを確保するためのカーテン代わりにしたり、火を焚く際の反射板として利用したりできます。怪我をした際には三角巾や担架の代わり、絞ってロープのように使うことも可能です。また、光を反射する素材のため、遭難時には目印としても役立ちます。

緊急時以外でも、アウトドアやレジャーで雨具や日よけとして活用できるほか、保温力を利用して飲み物を保冷・保温するのにも利用できます。

注意点と限界

エマージェンシーブランケットは便利な反面、いくつかの注意点があります。

非常に薄いため、風でめくれやすく、特に子供が使用する場合は注意が必要です。また、素材が破れやすく、一度広げると元のサイズに畳むのが難しいものも多く、使い捨てになることもあります。防水性が高いため、内部の湿気がこもりやすく結露しやすいという欠点もあります。

乳児に対しては、体温が上昇しやすいため、使用すると汗冷えを起こしたり、通気性が悪いため窒息する危険性も指摘されています。また、安価なため、子供を持つ親が安易に購入してしまい、思わぬ危険を招く可能性も考慮する必要があります。

2013年にJAFが行った実験では、エマージェンシーブランケットのみでは、吹雪の中の車内でのサバイバルにおいて、他の防寒具と比較して効果が限定的であることが示されました。低温下では、発汗による水分が結露し、身体を冷やしてしまう可能性も指摘されています。

これらの点を考慮すると、エマージェンシーブランケットはあくまで緊急時の応急処置として捉え、過信することなく、他の防災用品と併用することが望ましいと言えるでしょう。

まとめ

エマージェンシーブランケットは、そのコンパクトさと多機能性から、防災用品として非常に有用です。しかし、その特性と限界を理解し、適切な状況下で使用することが重要です。過信せずに、他の防災用品と組み合わせて活用することで、より安全な避難生活を送ることができるでしょう。

参考文献

品田恭一他『マグニチュード手帳ぐらっ!ときたら災害から自分を守る本緊急時の〈安心・安全生活術〉』ワールドフォトプレス、2004年
鈴木アキラ他著、佐々木惣他編編『震災を生き延びる100の知恵』山と溪谷社、2006年
玉木貴『わが家の防災』駒草出版、2005年
朝比奈耕太他編編『山岳遭難最新エマージェンシーBOOK 遭難・事故を未然に防ぐ山の危険回避術』枻出版社、2011年