エミリオ・ルッス

エミリオ・ルッスの生涯

エミリオ・ルッス（Emilio Lussu, 1890年12月4日 - 1975年3月5日）は、イタリアの作家、政治家、軍人として、激動の20世紀を駆け抜けました。サルデーニャ島アルムンジャで生まれ、地主の次男として育ち、幼少期から父の平等主義の影響を受けました。この地での生活は、ルッスの人間観や民主主義への意識を形成し、サルデーニャ人としてのアイデンティティを強く意識させました。彼は、カリアリ、ローマ、パリでの学びを通じて、共和主義や社会主義の潮流を理解し、政治意識を高めていきました。

ラヌゼーイのサレジオ会大学、ローマの国立テレンジオ・マミアニ高校を経て、1915年にカリアリ大学で法学の学位を取得。兵役を免除されていましたが、第一次世界大戦の勃発により、歩兵連隊の士官として従軍することになります。

第一次世界大戦での経験

第一次世界大戦でイタリアが参戦すると、ルッスは補充士官として召集されました。彼は勇敢に戦い、4つの勲章を授与され、サッサリ機械化旅団の第151歩兵連隊で大尉に昇進しました。特に、アジアーゴ周辺での激戦は、ルッスに深い影響を与え、彼の代表作『戦場の一年』の執筆につながります。

この作品は、塹壕での兵士たちの苦しみや、戦争の不条理を描いたもので、イタリア文学における貴重なドキュメントとなりました。軍の規律への怒り、そして戦争の無意味さをリアルに表現しています。ルッスは、戦場で敵兵の顔を見ることなく殺し合うことの恐ろしさ、ジャーナリストが机上で戦争を語ることの空虚さを指摘しました。また、戦争での将軍や高級官僚に対する盲目的な敬意と、貧しい農民に適用された不必要な軍の規律を批判しました。この作品は、現代でも共感を呼ぶ反戦的なテーマを含んでおり、多くの文化や政治運動に影響を与えました。

反ファシズム運動と政治活動

第一次世界大戦後、ルッスは1921年に「サルデーニャ行動党」を創設し、自治主義や連邦主義を掲げ、サルデーニャの民族問題に取り組むようになりました。この党は、サルデーニャの農民や牧羊民による大衆運動を基盤として、裕福な地主や保守政党に対抗しました。ルッスは、1921年の総選挙で代議院議員に選出されました。

1922年、ムッソリーニのローマ進軍後、ファシスト党との合併交渉が行われましたが、ルッスはこれを拒否しました。1924年にも代議院議員に選出されましたが、後にジャコモ・マッテオッティ暗殺に抗議する「アヴェンティーノ脱退」に参加しました。

ファシストからの攻撃を受け、1926年には襲撃者の一人を射殺したために逮捕されましたが、正当防衛が認められました。しかし、ファシズム政権はすべての野党を廃止し、ルッスは5年の流刑を言い渡されました。流刑中、彼はカルロ・ロッセッリらと共に脱出し、パリで反ファシスト運動「正義と自由」を結成しました。その後も、スペイン市民戦争に参加したり、結核の治療を受けたりしながら、反ファシズム運動を続けました。

第二次世界大戦中には、行動党に参加し、ローマのレジスタンスに加わりました。戦後は、パッリ政権で大臣補佐を務め、その後も国民評議会などで活躍しました。彼は、行動党の哲学的社会主義者を代表し、党内の自由主義者たちと対立しました。行動党の分裂後、ルッスはサルデーニャ行動社会主義党を結成し、政治活動を続けました。

その後の人生

1948年から1963年まで、ルッスはイタリア社会党の候補者として下院議員に選出され、政治的な影響力を維持しました。1968年以降、健康上の理由から政治活動を引退しましたが、晩年まで故郷の島と交流し、歴史の重要なページの執筆を続けました。1975年、ローマで亡くなりました。

ルッスは、作家としても重要な作品を数多く残しました。『戦場の一年』の他にも、『ローマ地区への行進曲』や『反乱の理論』など、彼の思想や経験に基づいた作品は、今日でも多くの人に読まれています。また、妻のジョイス・サルヴァドーリも作家、翻訳家として活躍し、二人の間には息子ジョヴァンニがいました。

アルムンジャには「エミリオ、ジョイス・ルッス」博物館があり、二人の生涯や業績を伝える多くの資料が展示されています。ルッスは、その勇敢な行動と深い思想によって、今もなお多くの人々から尊敬を集めています。

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