エミール・テオドール・コッハー

エミール・テオドール・コッハー

エミール・テオドール・コッハー（1841年8月25日 - 1917年7月27日）は、スイス出身の著名な外科医であり、特に甲状腺手術における業績で知られています。彼は1909年にノーベル生理学・医学賞を受賞し、外科医療界に多大な影響を与えました。

生い立ちと教育

コッハーはスイスの首都ベルンで生まれ、父親は技術者でした。彼はベルン大学で医学を学び、1863年に学位を取得後、1865年には博士号を取得しました。続けてベルリン、パリ、ウィーンで外科医としての研修を受け、特にウィーン大学では内臓外科学の権威であるテオドール・ビルロートの指導を受けました。1872年から1911年にかけて、彼はベルン大学で外科の教授を務めました。

主な業績

コッハーの業績は1870年に発表された肩甲関節の治療に関する論文から始まりました。その後、彼は内分泌器官である甲状腺に関連する腫瘍研究に着手し、その解剖学、病理学、さらには治療法の開発に進みました。1876年には甲状腺の全切除に成功し、1883年にはこの手術がクレチン病の発症を防ぐものであることを報告しました。

甲状腺は、気管や食道、頸動脈と非常に近接しているため、手術が極めて難しい器官です。コッハーはこの手術の慎重さと高い技術を用いて、多くの成功を収めていきました。1880年には『閉鎖創傷について』という書籍を出版し、1882年には『外科手術学』を著しました。以後、彼は急性骨髄炎や銃創の処置、胆道疾患の治療法、さらには脳脊髄の生理にも着手し、時には舌切除や関節手術に関する新たな術式も開発しました。

コッヘル法と手術の革新

彼の手法の中でも有名なのは、肩関節脱臼の整復術で、コッヘル法として知られ、現在でも広く用いられています。また、彼は人工肛門手術にも成功し、1909年のノーベル賞受賞の際には、業界的に注目される存在となりました。

コッハーはジョゼフ・リスターの無菌手術法をスイスに導入し、甲状腺手術の方法を改革しました。1912年までに、彼は5400件以上の甲状腺手術を行い、その死亡率を18%から0.5%まで低下させるという偉業を達成しました。彼の手術における慎重さと確実性は、外科医として高く評価される理由の一つでした。

器具の改良と遺産

コッハーは手術に必要な器具の改良にも注力しました。特に、鋸歯状で先端に鉤が付いたコッヘル鉗子（コッヘルとも呼ばれます）は、現在でも多くの手術で使用されています。さらに、彼はゾンデの開発にも携わり、外科手術に革命をもたらしました。

コッハーの業績は、外科医療の発展に貢献し、彼の名前は医学史に刻まれています。彼の肖像は1967年にスイスの郵便切手に採用され、今日でもその功績が称えられています。彼が設立した研究所は、今もスイスのベルンに存在し、医療の進歩に寄与しているのです。

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