エリザベス・ステュアート (1635-1650)

エリザベス・ステュアートは、17世紀のイングランド、清教徒革命（イングランド内戦）の時代に生きた王族です。1635年12月28日に、イングランド王チャールズ1世と王妃ヘンリエッタ・マリアの次女として誕生しました。彼女の家系は、ステュアート朝という名門であり、兄には後のイングランド王チャールズ2世とジェームズ2世、弟にグロスター公ヘンリー、姉にはオラニエ公妃メアリー・ヘンリエッタ、妹にはオルレアン公妃ヘンリエッタ・アンがいました。フランス王ルイ14世は母方の従弟にあたり、イングランド王兼オランダ総督ウィリアム3世は甥にあたるという、ヨーロッパの王室と深く結びついた一族でした。

彼女の生涯は、イングランド内戦という動乱の時代に翻弄されました。1642年、父チャールズ1世が議会と対立し、ロンドンを脱出した際、当時7歳だったエリザベスは、2歳の弟ヘンリーとともにセント・ジェームズ宮殿に留め置かれました。このことが、彼女とその家族の運命を大きく変えることになります。第一次イングランド内戦が勃発すると、エリザベスは弟と共に議会派の人質となり、ノーサンバランド伯アルジャーノン・パーシーに養育されることになりました。これは、王室の一員でありながら、敵対する勢力の人質となるという、非常に難しい立場に置かれたことを意味します。

また、この時期、父チャールズ1世は、アイルランド・カトリック同盟やカトリック諸国からの援軍を求めていました。その見返りとして、グラモーガン伯エドワード・サマセットに対し、エリザベスを彼の長男ヘンリー・サマセットに嫁がせるという約束を申し入れたという記録も残っています。これは、政略結婚が当たり前の時代において、エリザベスの人生が政治的な駆け引きの道具として利用されていたことを示唆しています。

1646年、内戦は議会派の勝利で終わり、エリザベスはオックスフォードからセント・ジェームズ宮殿に戻り、次兄のジェームズと共に人質生活を送ることになります。彼女は、1649年1月30日に処刑された父チャールズ1世と最後の別れを交わした唯一の家族でした。しかし、その直後、議会派によってワイト島・カリスブルック城に軟禁されることになります。そして、1650年、エリザベスはわずか14歳でその短い生涯を閉じました。彼女の死因は、父の処刑による深い悲しみとされています。激動の時代に翻弄され、若くして亡くなった彼女の生涯は、イングランド内戦という時代の悲劇を象徴していると言えるでしょう。

エリザベス・ステュアートは、歴史の流れの中で、その短い人生を終えましたが、彼女の存在は、17世紀のイングランドの歴史を語る上で、重要な意味を持っています。彼女は、王族として生まれながらも、内戦という動乱の中で、政治的な駆け引きや人質という立場を経験し、そして悲劇的な死を迎えたのです。彼女の生涯は、当時の社会情勢や政治状況、そして人々の生活を考える上で、貴重な示唆を与えてくれます。

もう一度検索