エルスタル

エルスタル：歴史と産業が交錯するベルギーの古都

エルスタルは、ベルギーのワロン地域、リエージュ州に位置する自治体です。マース川のほとりに広がり、古くはエリスタルとも呼ばれていました。リエージュの北東約5kmに位置し、周辺地域と合わせて「グレーター・リエージュ」を形成しています。

歴史：メロヴィング朝から現代まで

エルスタルの地には、紀元前5千年紀から人々が定住していました。ローマ時代後、メロヴィング朝の時代には軍事拠点として重要視され、トンゲレンとアーヘンを結ぶ街道がマース川を渡る地点として交通の要衝となりました。

7世紀には、アウストラシアとネウストリアの宮宰であったピピン2世がこの地を居住地と定めました。ピピン2世は、フランク王国の宮廷における実力者であり、彼の息子であるカール・マルテルの活躍も、エルスタルに深く関わっています。また、カール・マルテルの孫であるカール大帝もエルスタルで生まれ、少なくとも15年は住んでいたとされています。しかし、カール大帝がアーヘンに中心地を移したことで、エルスタルは帝国の中心としての役割を終えました。

中世には、ブラバント公国の一部となり、後にリエージュ司教領に組み込まれました。1740年、プロイセン王フリードリヒ2世によって買収されるまでの間、この地はリエージュ司教領には属していませんでした。当時、この地域は陶芸、鍛冶、時計などの職人たちの街として知られていました。19世紀には、石炭と鉄鋼産業が発展し、1889年には国営軍需企業ファブリックナショナルが創業し、世界的に有名な銃器メーカーとして知られるようになりました。第一次世界大戦中には、ドイツ軍によって多くの犠牲者が出ました。

第二次世界大戦後、重工業は衰退しましたが、近年では経済が復興し、欧州宇宙機関のロケット「アリアン」の部品を製造する企業など、200以上の企業が進出しています。

エルスタルの見どころ

エルスタルには、歴史的な遺産や文化施設が数多く残されています。1664年に建てられた博物館では、先史時代やガロ・ローマ文化の出土品、そして地元産業の象徴であるファブリックナショナルの製品サンプルが展示されています。また、「ピピンの塔」の壁には、カール大帝の宮殿に使われていた建材が用いられていると考えられています。

エルスタルゆかりの人物

エルスタルは、歴史上の偉人を輩出した地でもあります。ピピン2世は、アウストラシア、ネウストリア、ブルゴーニュの宮宰を務め、フランク王国の発展に大きく貢献しました。カール・マルテルは、トゥール・ポワティエ間の戦いでアラブ人の侵攻を食い止め、西ヨーロッパを守りました。カール大帝は、フランク王国の王となり、神聖ローマ帝国を築いた人物として知られています。また、アメリカの銃器設計者ジョン・ブローニングも、エルスタルと深い関わりがあります。

姉妹都市

エルスタルは、以下の都市と姉妹都市提携を結んでいます。

カステルマウロ（イタリア）
キルマーノック（イギリス）
* アレス（フランス）

エルスタルは、古代から現代に至るまで、様々な歴史と文化が交錯する魅力的な街です。訪れる人々は、その豊かな歴史遺産と産業の発展を目の当たりにすることでしょう。

もう一度検索