エルハーブ

エルハーブ：ダービーステークス優勝馬の栄光と、種牡馬としての歩み

エルハーブは、1994年のダービーステークスとダンテステークスを制覇したイギリスのサラブレッド競走馬です。アラブ首長国連邦のハムダン殿下所有、ダンロップ調教師の管理の下、輝かしい競走生活を送りました。

1993年、2歳でデビュー。デビュー戦こそ7着に終わりますが、その後は着実に力をつけていき、5戦目で2勝目を挙げました。重賞初挑戦となったG3ホーリスヒルステークスでは3着と健闘し、2歳シーズンは6戦2勝という成績で幕を閉じました。

翌1994年、3歳シーズン。エルハーブは、ダービーの前哨戦として知られるダンテステークスに挑みます。ヨーク競馬場で行われたこのレースで、エルハーブはコースレコードで優勝。一躍ダービーの本命候補へと躍り出ました。血統的には、短距離～中距離を得意とする種牡馬ダンジグの孫であることから、長距離レースへの適性には疑問視する声も上がっていましたが、ダービーではそれらを払拭する圧勝劇を演じました。2着馬キングスシアターに2馬身1/4差をつける快勝劇で、ダービー馬の栄冠を手にしたのです。

ダービー制覇後、古馬路線に挑戦しますが、エクリプスステークスでは3着。その後、キングジョージ6世&クイーンエリザベスダイヤモンドステークスに出走しますが、ダービーで破ったキングスシアターに大差をつけられ7着に敗れ、さらにレース中の故障も判明したため、現役を引退することとなりました。このレースには、後に日本競馬界を代表する騎手となる武豊騎手がホワイトマズルに騎乗し、2着に入線しています。

エルハーブの騎手は、デビューから3戦目までW.ニューネス騎手が務めましたが、それ以降はウィリー・カーソン騎手が主戦騎手として活躍しました。

1995年、エルハーブは日本へ輸出され、種牡馬となりました。しかし、期待されたほどの活躍馬を輩出することはできず、JRA重賞勝ち馬を輩出することなく、2000年にイギリスへ再輸出されました。代表産駒としては、船橋競馬場の重賞・平和賞を制したノトテイオーや、地方競馬で活躍したホシオーなどが挙げられますが、その活躍は限定的なものでした。

再輸出後も目立った活躍馬を輩出する事はありませんでしたが、母父としてはフクノドリーム（エーデルワイス賞優勝）など、活躍馬を輩出しています。2021年11月23日、繋養先のイギリス・グロスターシャー州バッツフォードスタッドで死亡したことが発表されました。

エルハーブの血統背景も興味深いものです。父は、ブリーダーズカップ・ジュヴェナイルをはじめアメリカでG1を8勝した名種牡馬チーフズクラウン。その代表産駒には、チーフベアハート（ブリーダーズカップ・ターフ優勝、マイネルレコルトなどの父として知られる）などがいます。さらに、祖母Helvetieの孫には、輸入種牡馬として活躍したハーリー（1993年の京都記念勝ち馬パリスハーリーの父）や、エーピーグランプリ（1993年のラジオたんぱ賞勝ち馬）など、著名な競走馬がいます。

エルハーブは、ダービー制覇という輝かしい実績を残した競走馬として、また種牡馬としてのキャリアを通して、競馬史にその名を刻みました。その短いながらも濃密な競走生活、そして種牡馬としての歩みは、多くの競馬ファンにとって記憶に残るものとなっています。その血統は、今もなお競馬界に影響を与え続けているのです。

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