エレクトロ・モーティブ・ディーゼル

Electro-Motive Diesel (EMD) の歴史：ディーゼル機関車のパイオニア

Electro-Motive Diesel（EMD）は、世界で2番目に大きな機関車メーカーとして知られています。アメリカ合衆国を拠点とし、7万両を超えるディーゼル機関車を製造してきたEMDの歴史は、ディーゼル機関車の進化そのものを物語っています。

創設期とGMへの買収

EMDの起源は、1922年に設立されたElectro-Motive Engineering Companyに遡ります。当初はガソリン電気式気動車の製造からスタートし、1923年にはシカゴ・グレートウェスタン鉄道とノーザン・パシフィック鉄道に2両の車両を納入。高い性能と信頼性で高い評価を獲得しました。1925年にはElectro-Motive Companyへと社名変更、その後、ディーゼルエンジンの可能性に着目し、その開発に注力していきます。

この時期、ゼネラルモーターズ（GM）もディーゼルエンジン技術の開発に力を入れており、1930年にはGMがウィントン・エンジン・コーポレーションとEMDを買収。GMの資金力と技術力を背景に、EMDは鉄道用ディーゼルエンジンの開発を加速させました。1935年にはイリノイ州マコーミックに新工場を建設し、量産体制を確立。機関車の価格を大幅に低減することで市場でのシェアを拡大していきます。

新型エンジンの開発と成功

EMDは、567型エンジンという画期的なディーゼルエンジンを開発。このエンジンは、気筒あたり567立方インチの排気量を誇り、V型6気筒からV型16気筒まで様々なバリエーションが用意されました。このエンジンを搭載した機関車は、高い出力と信頼性で鉄道会社から高い評価を受け、EMDの躍進を支えました。特に、貨物用機関車FTの開発と実証試験は大きな成功を収め、蒸気機関車からディーゼル機関車への転換を加速させました。1941年には、GMはEMDとウィントンのエンジン部門を統合し、正式にElectro-Motive Division（EMD）を設立しました。

第二次世界大戦と戦後の競争

第二次世界大戦中は、海軍向けディーゼルエンジンの生産に集中しましたが、戦後、EMDは再び機関車製造に注力。戦後、多くの鉄道会社がディーゼル化を進める中、EMDはALCO（アメリカン・ロコモティブ・カンパニー）やボールドウィン・ロコモティブ・ワークスなどの競合他社を圧倒的な技術力と生産力で凌駕し、市場を制覇していきます。1949年にはカナダに工場を建設し、海外市場への進出も開始しました。この時代に画期的なGP7機関車が開発され、フードユニットと呼ばれる新しいデザインの機関車が市場を席巻しました。

技術革新と新たなエンジン

EMDは、567型エンジンに続く645型、710型エンジンといった高性能ディーゼルエンジンの開発を続けました。また、電子制御システムやターボチャージャーといった新技術を積極的に導入し、機関車の性能向上に貢献しました。1972年にはDash 2シリーズを発表。このシリーズはモジュラーコントロールシステムを採用し、高い信頼性とメンテナンス性を誇りました。1984年には、710型エンジンが登場し、その後も265型エンジン(H型エンジン)へと進化を続け、エンジン出力は6000馬力にまで到達しました。

GMからの独立とキャタピラー傘下へ

長らくGMの傘下にあったEMDですが、2005年にGMから独立し、Electro-Motive Dieselとして新たなスタートを切りました。そして2010年には、建設機械メーカーであるキャタピラーの子会社であるプログレス・レール・サービシズに買収され、現在に至っています。

まとめ

EMDは、ディーゼル機関車の開発と製造において、長年にわたって技術革新を牽引してきた企業です。ガソリン電気式気動車の製造から始まり、高性能ディーゼルエンジンの開発、そして電子制御システムの導入など、常に時代の先端を走り続けてきました。現在も、世界中の鉄道会社にディーゼル機関車を供給し、鉄道輸送の発展に貢献し続けています。 今後のEMDの動向にも注目が集まります。

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