エンジェル・オブ・デス

スレイヤー「エンジェル・オブ・デス」：問題作にしてメタル史に残る名曲

「エンジェル・オブ・デス」（Angel of Death）は、アメリカのスラッシュメタルバンド、スレイヤーが1986年に発表したアルバム『レイン・イン・ブラッド』のオープニングを飾る楽曲です。この曲は、バンドのギタリストであるジェフ・ハンネマンが作詞を手掛け、ナチスの医学者ヨーゼフ・メンゲレがアウシュヴィッツ＝ビルケナウ強制収容所で行った人体実験を題材としています。

曲の成立と歌詞の内容

ハンネマンは、ライブツアー中にメンゲレに関する2冊の本を読み、その内容に強い衝撃を受けました。歌詞は、第二次世界大戦中にアウシュヴィッツで行われた外科実験、特にメンゲレが双生児や小人症患者に対して行った人体実験について描写しています。麻酔なしでの人体縫合、双生児間での輸血、隔離実験、化学兵器や生物兵器の注入、性転換手術、四肢切断など、その内容は目を覆うばかりです。メンゲレは、その非人道的な行為から「死の天使（Angel of Death）」と呼ばれるようになりました。

論争と批判

「エンジェル・オブ・デス」の歌詞は、発表当時から大きな論争を呼びました。ホロコーストの生存者やその家族からは怒りの声が上がり、スレイヤーは親ナチ的なバンドであるとの批判に晒されました。ハンネマンがナチスの歴史に関心を持ち、ドイツの鉄十字章を収集していたことも、その批判を強める要因となりました。

しかし、ハンネマン自身は、歌詞の内容は単に歴史的な出来事を描写したものであり、ナチズムを肯定するものではないと反論しています。他のメンバーも、バンドがナチズムや人種差別を容認しているわけではなく、単に興味のある題材を扱ったに過ぎないと説明しています。

楽曲の評価と影響

論争はあったものの、「エンジェル・オブ・デス」はスレイヤーの代表曲として、ライブアルバムやビデオ、映画のサウンドトラックなど、様々なメディアで取り上げられています。評論家からの評価も高く、オールミュージックは「クラシックである」と評し、CDジャーナルは「スラッシュ・メタル史上に残る名曲」「すべてが完璧」と絶賛しています。

この曲は、その過激なテーマと音楽性によって、スレイヤーを語る上で欠かせない存在となっています。また、パブリック・エナミーがリフをサンプリングした他、コンピュータゲームにも使用されるなど、様々な分野に影響を与えています。

曲構成

4分51秒の曲は、アラヤの鋭いスクリームで始まり、ロンバードの210BPMのドラムが続きます。 ハンネマンとキングによる複雑なギターリフが特徴的です。

まとめ

「エンジェル・オブ・デス」は、その歌詞の内容から賛否両論を巻き起こした問題作ですが、スレイヤーの音楽性を代表する楽曲として、スラッシュメタル史にその名を刻んでいます。この曲を巡る論争は、音楽における表現の自由や倫理観について、私たちに深く考えさせるきっかけとなるでしょう。

映画『グレムリン2』や『ジャッカス・ザ・ムービー』などのサウンドトラックにも使用されています。

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