エンジニア・アーキテクト

エンジニア・アーキテクトとは

エンジニア・アーキテクトとは、建築構造の設計と建設を担う技術者であり、アーキテクチュアル・エンジニアリング（Architectural engineering）を行う専門家です。一般的には構造技術者（構造家）として知られていますが、その役割は単なる構造設計にとどまりません。

歴史的背景

この言葉の起源は、建築史家の村松貞次郎氏が、幕末から明治初期にかけて活躍した、西洋の建築家が来日する以前の技術者たちを指して「建築家的技術者（エンジニア・アーキテクト）」と紹介したことに遡ります。当時の技術者は、西洋の建築教育を受けておらず、純粋なエンジニアとしてのキャリアを活かし、西洋建築を日本に導入していきました。彼らは、構造的な知識と技術を駆使し、今日の目から見てもエンジニアとしての卓越した能力を発揮していました。

Structural Artistとしての側面

プリンストン大学のデビット・P・ビリントン教授は、著書『The Tower and The Brdge』の中で、この役割を「Structural Artist」と表現しました。この書籍では、本来エンジニアでありながら建築物の仕事を手がけたギュスターヴ・エッフェル、フェリックス・キャンデラ、ピエール・ルイージ・ネルヴィといった人物が紹介されています。彼らは、建築家として紹介されたり、構造に関する国際会議で講演したりする一方で、構造技術者としての側面も持ち合わせていました。

現代におけるエンジニア・アーキテクト

現代においても、エンジニア・アーキテクトの重要性は変わっていません。篠原修氏は、著書『土木造形家(エンジニア・アーキテクト) 百年の仕事』で、20世紀を代表する構造技術者であるロベール・マイヤール、クリスチャン・メン、サンチャゴ・カラトラバなどを「エンジニア・アーキテクト」として紹介しています。これらの技術者は、単に構造設計を行うだけでなく、デザインや機能性も考慮した建築物を創造しています。

テクニカルアプローチの建築家

さらに、篠原修氏は、テクニカルアプローチで設計する建築家として、ノーマン・フォスターやレンゾ・ピアノもエンジニア・アーキテクトに含めています。彼らは、高度な技術と構造的な知識を駆使して、革新的な建築物を実現しています。

エンジニア・アーキテクトの役割

エンジニア・アーキテクトは、建築物の構造設計だけでなく、デザインや機能性、そして安全性までを総合的に考慮する必要があります。彼らは、技術的な知識を駆使し、美的感覚と機能性を両立させることのできる専門家です。また、プロジェクトの初期段階から関わり、建築家や他の専門家と協力しながら、最適な構造ソリューションを提供します。

まとめ

エンジニア・アーキテクトは、単なる技術者ではなく、建築物の創造に関わる重要な役割を担っています。歴史的な背景から現代の建築家まで、彼らは建築構造の進歩に貢献しており、その多様な側面は、建築の世界において不可欠な要素となっています。


参考文献
* 日本近代建築の歴史　村松貞次郎　岩波書店

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