エンデサ

エンデサ：スペインを代表するエネルギー企業の歩み

エンデサ（Endesa, S.A.）は、スペイン・マドリードに本社を置く、スペイン最大の電力会社です。イベルドローラ、ナトゥルジーと共にスペイン三大電力会社の一つとして、国内電力市場の90％を占める巨大企業であり、電力事業に加え、ガス事業や水道事業も展開しています。マドリード証券取引所に上場しており、IBEX 35指数にも含まれるなど、スペイン経済を代表する企業の一つと言えるでしょう。現在、イタリアの電力大手エネルがエンデサ株の70％を保有しています。

エンデサは原子力、火力、水力発電を組み合わせ、スペイン国内で1,000万人以上の顧客に電力を供給しています。さらに、その事業は国境を越え、イタリア、フランス、ポルトガル、モロッコ、南米諸国などにも拡大しており、スペイン国外でも1,000万人を超える顧客を抱えています。2004年末には、世界2,220万人への電力供給を達成していました。かつてはスペインの天然ガス会社や通信事業会社も傘下に収めていました。

エンデサの設立とスペイン電力業界の自由化

エンデサの歴史は、1944年に設立された国営電力会社、Empresa Nacional de Electricidad, S.A.に遡ります。スペイン政府の国営持株会社である産業公社（INI）の傘下で発足し、翌年にはコンポスティリャ火力発電所の建設を開始しました。しかし、国営企業ゆえの官僚主義や外部資金調達における困難さといった問題を抱えていました。

1950年代後半の経済危機を契機に、スペイン政府は電力業界の自由化を推進します。1960～70年代には、INIの効率化に向けた改革が試みられ、1970年には新社長が就任し、収益性向上と補助金依存からの脱却を目指した再編計画が策定されました。しかし、鉄鋼危機やオイルショックなど、経済状況は依然として厳しく、INIは赤字企業の吸収を余儀なくされました。

1978年にはINIの新社長が、政府からの不採算企業買収要求を制限する権限を獲得し、企業ポートフォリオの整理を進めました。そして1983年、INIの更なる効率化を目指し、エンデサを中心とした再編が行われました。INIが保有するENHER、GESA、UNELCO、ENECOといった電力会社が次々とエンデサに統合され、エンデサはスペイン最大の電力会社へと成長しました。

1988年には政府保有株の25％が株式公開され、民営化プロセスが開始されました。1997年と1998年の追加公開を経て、エンデサは民営企業となりました。2000年には、EUによる電力自由化基準に沿って、スペイン電力市場の完全自由化が決定されました。

自由化に伴い、スペイン電力業界では企業再編が進み、エンデサを筆頭に4大企業に集約されました。その後、海外企業による買収が進む中、エンデサはEU諸国や中南米への進出を加速させ、積極的に海外企業の買収を行いました。2004年にはフランス電力会社SNETを買収し、その後、リストラを実施しました。

エンデサをめぐるM&A合戦と政治的背景

2006年以降、エンデサ自身もM&Aの対象となり、スペインエネルギー業界の主導権を巡る争いが激化しました。Gas Natural、E.ON、エネルといった企業が買収に名乗りを上げ、スペイン国内では経済ナショナリズム、政治的思惑が絡み合う複雑な状況となりました。

2007年、最終的にエネルとスペインの建設大手アクシオナがエンデサを買収し、エネルがエンデサの主要株主となりました。この買収劇は、欧州委員会から、スペイン政府による自由化への逆行、買収への介入を理由に欧州司法裁判所に提訴される事態にも発展しました。

2010年には、大阪ガスがエンデサの子会社が保有するサグントLNG基地事業の20％を取得するなど、エンデサを取り巻く動きは、現在も世界規模で続いています。エンデサの歴史は、スペインの電力業界の変遷、そしてグローバルなエネルギー市場のダイナミズムを象徴する出来事と言えるでしょう。

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