エンドリン

エンドリン：その用途から規制に至るまで

エンドリンは、化学式C₁₂H₈Cl₆Oで表される有機塩素化合物です。ディルドリンとは構造が非常に良く似た立体異性体の関係にあります。

用途と規制

日本では、1954年に殺虫剤、1963年には殺鼠剤として登録されました。野菜や果樹の害虫駆除に広く用いられましたが、残留性や水質汚濁性が高いことが判明し、1971年には柑橘類の幼木以外への使用が禁止されました。その後、1973年には殺鼠剤としての登録が、1975年には殺虫剤としての登録が失効し、1981年には化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律（化審法）により、製造、販売、使用が全面的に禁止されました。
日本以外では、綿花栽培を中心に、テンサイ、タバコ、穀物栽培などにも使用されていましたが、環境への悪影響から、多くの国で規制対象となっています。

合成方法

エンドリンは、ヘキサクロロシクロペンタジエンを出発物質として、複数段階の化学反応を経て合成されます。詳細な合成経路は、専門的な化学知識を必要とするため、ここでは割愛させていただきます。

安全性

日本の毒物及び劇物取締法では毒物に分類されています。ラットへの経口投与における半数致死量（LD50）は6.54mg/kg、経皮投与では8.07mg/kg以上です。
摂取すると、中枢神経系に影響を及ぼし、めまい、脱力感、嘔吐、痙攣などの症状が現れます。皮膚からも吸収されるため、取り扱いには細心の注意が必要です。
また、不燃性ですが、245℃以上で分解し、塩化水素やホスゲンなどの有害なガスを発生します。1970年には、キュウリから基準値を超えるエンドリンが検出され、社会問題となりました。

環境への影響

エンドリンは、[残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約]]で、残留性有機汚染物質]に指定されています。水生生物に対する毒性は極めて高く、ピンクシュリンプに対する96時間半数致死濃度(LC50)は0.000037mg/Lです。さらに、脂溶性であるため、魚介類などで[[生物濃縮が起こり、食物連鎖を通じて生態系に深刻な影響を与えます。化審法では第一種特定化学物質に指定されています。

まとめ

エンドリンは、かつて農業において広く用いられた殺虫剤・殺鼠剤でしたが、その高い毒性と環境への影響から、世界各国で製造・使用が禁止されています。その残留性や生物濃縮性、そして人体への危険性から、現在では、その存在自体が環境問題として認識されています。 本物質に関する情報は、環境保護の観点からも非常に重要な教訓となります。

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