エン・サガ

シベリウスの交響詩『エン・サガ』について

音詩『エン・サガ』（作品9）は、ジャン・シベリウスが作曲した初期の重要な管弦楽曲です。スウェーデン語で「ある伝説」を意味し、フィンランド語では「Satu」と呼ばれます。この作品は、シベリウスが交響詩というジャンルに足を踏み入れた最初の試みの一つであり、彼の独特な音楽的才能が早くも発揮されています。

作曲の経緯と初演

『エン・サガ』は1892年に作曲され、その後1902年に改訂されました。作曲のきっかけは、シベリウスの交響曲『クレルヴォ』の成功を見たロベルト・カヤヌスからの依頼でした。カヤヌスは当初、フィンランドの民族的な情緒を盛り込んだ短いアンコールピースを期待していましたが、シベリウスが完成させたのは、演奏時間が18分から19分にも及ぶ壮大な交響詩でした。初版は1893年2月16日にシベリウス自身の指揮で、改訂版は1902年11月3日にカヤヌスの指揮で、それぞれヘルシンキで初演されました。

タイトルと内容

『エン・サガ』というタイトルは、「ある伝説」という意味を持っています。この「伝説」が具体的に何を指すのかについては、北欧神話のサーガであるという説と、単に古い伝説全般を指すという説があります。しかし、シベリウス自身は、この作品が特定の物語に基づいているとは明言していません。彼は聴衆に、自身の想像力で自由に物語を解釈することを委ねたのです。

音楽的特徴

『エン・サガ』は、シベリウスの初期の作品でありながら、彼の管弦楽法の特徴がすでに表れています。弦楽器を分割して演奏させる手法や、テクスチュアの多彩な変化、低音域へのこだわりなど、後の作品にも共通する要素が見られます。楽器編成は、フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、チューバ1、バスドラム、トライアングル、シンバル、そして弦楽五部です。これらの楽器が織りなす音響は、神秘的で幻想的な雰囲気を醸し出し、聴衆を伝説の世界へと誘います。

シベリウスの成功の礎

『エン・サガ』は、シベリウスにとって初期の成功作の一つとなりました。改訂版は、ヘンリー・ウッドやトスカニーニ、フルトヴェングラーといった著名な指揮者たちのレパートリーに加えられ、広く演奏されるようになりました。この作品を通して、シベリウスは国際的な評価を確立し、その後の作曲活動への道を切り開いたのです。

外部リンク

交響詩「エン・サガ」の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)：PDF形式で無料で入手できます。
交響詩《エン・サガ（ある伝説）》　作品9
Satu（フィンランド語）
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『エン・サガ』は、シベリウスの音楽世界への入り口として最適な作品の一つです。ぜひ一度、その神秘的な響きに耳を傾けてみてください。

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