エースカーリー経

エースカーリー経について

『エースカーリー経』（エースカーリーきょう、巴: Esukārī-sutta）は、パーリ仏典の中部経蔵に位置する第96経です。この経典は、仏教の教えがどのようにして階級による偏見を超えて普遍的であるかを示しており、特に婆羅門階級に属するエースカーリーとの対話を通じてその重要性が伝えられています。また、類似の漢訳文献として『中阿含経』の第150経、通称『鬱痩歌邏経』があります。これらの文献は、仏教の教義がどのように河を越えた文化的伝播を見せるかを物語っています。

登場人物と背景

この経典では、主要な登場人物として釈迦と婆羅門のエースカーリーがいます。物語の舞台は、サーヴァッティーにあるアナータピンディカ園、さらには有名な祇園精舎です。釈迦がこの場所に滞在していた際、エースカーリーが訪れ、この場における議論が展開されます。

エースカーリーは当時の社会における四つの階級（カースト）の上下関係や、それぞれの階級に課せられた義務について徹底的に考察しました。彼の見解に釈迦は応じ、行いの善悪が階級を問わず存在すること、また、誰にでも涅槃が最も重要で尊いものであると教えました。ここでの釈迦の教えは、ただ単に倫理や制度に関する知識を超えて、究極の真理を探求する姿勢を促すものでした。エースカーリーは釈迦の教えに感銘を受け、三宝（仏、法、僧）への帰依を誓いました。

教えの内容

この経典の核心的なメッセージは、社会的な地位や階級によらず、行いの結果が平等に現れるという点です。釈迦は、善行は善い果実を生み出し、悪行は悪い果実を生むと明確に示しています。この教えは、平等条件のもとで人々が自己の行動を省み、その結果を受け入れることの重要性を説いています。このようにして、経典は人々に内面的な変容を促し、自己の行動が他者に与える影響を意識させる役割を果たしています。

まとめ

『エースカーリー経』は、仏教の教えが持つ普遍性や深遠さを象徴する重要な経典です。釈迦とエースカーリーの対話は、単なる哲学的議論にとどまらず、実生活に根ざした教訓であり、現代でもその教えは多くの人々に影響を与えています。理念としての階級の壁を越え、すべての人に平等に真理を理解する機会を提供するこの経典は、仏教における教えの広がりやその深さを示す貴重な証でもあるのです。

日本語訳の出版情報

本経典は、以下の著作に日本語訳として収録されています。

• - 『南伝大蔵経・経蔵・中部経典3』(第11巻上) 大蔵出版
• - 『パーリ仏典 中部（マッジマニカーヤ）中分五十経篇II』 片山一良訳 大蔵出版
• - 『原始仏典 中部経典3』(第6巻) 中村元監修 春秋社

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