エーリダノス

エーリダノス川の概要と神話

エーリダノス川（古代ギリシア語: Ἠριδανός）は、古代ギリシアの神話に登場する神聖な河川であり、その河神も存在します。この川は大洋神オーケアノスとテーテュースの子供であるとされ、主に世界の北または西を流れると考えられていました。川の河口にはエーレクトリデス諸島、つまり琥珀の島々が広がっているとされ、古代の地理的知識に基づき、エーリダノスは後のポー川やローヌ川と同一視されるようになりました。また、アテネのケラメイコス地区には実在のエリダノス川も流れています。

エーリダノスとパエトーンの神話

特にエーリダノス川にまつわる注目すべき神話が、青年パエトーンに関する物語です。パエトーンは太陽神ヘーリオスとクリュメネーの息子であり、一度だけ父の戦車を運転する許しを得ました。しかし、彼はその制御を失い、天の道から逸脱してしまいます。その結果、地球は火に包まれそうになり、これを見かけたゼウスは雷霆を投げて戦車を撃ち落しました。パエトーンはエーリダノス川に墜落し、そこで命を落とします。

彼の死を嘆いた姉妹たちは、涙を流しましたが、その涙はやがて固まり琥珀となりました。ヒュギーヌスの書によると、パエトーンは高く昇りすぎて恐怖でエーリダノス川に落ちたともされ、最終的にこの事件が全人類の滅亡に繋がったという伝説が存在します。ゼウスは川の氾濫を引き起こし、デウカリオーンとその妻を除く人々はこの洪水で滅びました。

アルゴナウタイの航海とヘーラクレース

エーリダノス川はまた、アルゴナウタイの航海においても重要な舞台となります。彼らは金羊毛を求める旅から帰る際、ドナウ川を遡りエーリダノス川を通過します。その途中、ゼウスの怒りにより嵐に悩まされることになります。彼らは川をさかのぼることで、ギリシャの神々が住まう世界へと戻る道を見つけました。

さらに、ヘーラクレースの伝説でもエーリダノス川は重要な役割を果たします。彼は11番目の難行として黄金の林檎を手に入れるために旅をし、この川で神々と交信しながら情報を求めていました。これらの神話は、古代の人々がこの川を連想させ、エーリダノスに対する神秘的なイメージを形成していたことを示しています。

エーリダノス川の文化的意義

エーリダノスは、古代の交易路「琥珀の道」としての位置づけもあり、ポー川流域から地中海へと結ぶ重要なルートと考えられていました。この道を通じて琥珀がバルト海から運ばれ、多くの文化的交流が生まれたとされています。このように、エーリダノス川は神話だけでなく、実際の歴史にも影響を与えた存在であると言えるでしょう。

このように、エーリダノスは神話の世界において特異な存在であり、様々な伝説や物語において重要な役割を果たしています。

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