オイルサンド

オイルサンドとは

オイルサンドとは、鉱物油分を多く含み極めて粘性の高い砂岩の一種です。通常は地表近くにあり、原油を埋蔵した砂岩が露出したり、地下水と反応し揮発成分を失ったものと考えられています。色は通常黒ずんでおり、石油特有の臭いを放つのが特徴です。この砂岩は、石油精製によって得られるアスファルトに似た成分を持つため、かつては「タールサンド」と呼ばれていましたが、現在ではオイルサンドと呼ばれることが一般的です。一方、母岩が砂岩でない場合、例えば頁岩から得られるものは「オイルシェール」と称されます。

原油の代替資源としてのオイルサンド

オイルサンドやオイルシェールには、原油代替資源としての重要性が認識されています。現在、世界中に埋蔵されているオイルサンドから得られる重質原油は約4兆バレルにも及び、これは通常の原油の2倍以上という推定がされています。ただし、オイルサンドから1バレルの重質原油を生産するには、数トンの砂岩を採掘しなければならず、その際、大量の廃棄土砂が出ることがネックです。そのため、オイルサンドは生産コストが高く、廃棄物処理にかかる費用も無視できません。これらの要因により、長らく不採算資源とされてきました。

歴史的には、日本の第2次世界大戦中に石油資源が枯渇した際、満州においてオイルサンドの採掘が試みられ、1970年代のオイルショックの際には日本でのオイルシェール生産プラント実験が行われました。また、カナダ・アルバータ州では、2000年代以降、油価の高騰を背景に大規模な露天掘りが進み、ビチューメンから生成された改質原油がカナダの原油生産の重要な部分を占めるようになりました。対照的に、ベネズエラでは重質油が地下で通常の原油と同様に採掘されていますが、いずれの方法も流動性が低いため、生産性向上にはさまざまな工夫が必要です。

地球温暖化問題との関係

カナダは気候変動枠組条約の締約国であり、オイルサンドの生産および精製に伴う温暖化ガスの排出量が、温暖化問題に対する懸念のひとつとなっています。特に、カナダにおける地球温暖化ガスの排出量は、2008年から2012年の間に1990年比で30%の大幅な増加が見込まれています。この増加の要因にオイルサンドの影響が指摘され、結果的に否定的な資源としての認識が強まりました。なお、カナダ政府は第17回気候変動枠組条約締約国会議で京都議定書からの離脱を表明しています。

将来展望の課題

オイルサンド開発のコスト削減は進展しておらず、2010年代においても原油価格が高い時期でないと採算が取れない状況です。そのため、ロイヤル・ダッチ・シェルやノルウェー国営石油会社のスタトイル（現：エクイノール）は2016年にカナダのオイルサンド事業から撤退すると発表しました。カナダ政府自体も長期的な撤退の意向を示し、オイルサンドの将来は不透明な状況にあります。

オイルサンドの分布

オイルサンドは主にカナダのアルバータ州北東部のアサバスカ地域と、ベネズエラのオリノコ地域に広がっています。さらに、コンゴやマダガスカルにも存在しますが、日本にも新潟県の新津油田など、極めて低質なオイルサンドがあることが知られています。加えて、オイルシェールはアメリカ合衆国の西部やブラジル、ロシア、オーストラリアにも広く分布しています。括弧内の情報や歴史的背景を踏まえ、オイルサンドの特性やその将来に向けた考察が進められています。

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