オキナワスミレ

オキナワスミレ（Viola utchinensis）

オキナワスミレは、沖縄特有のスミレ科に属する多年草です。その学名の「ウチナー」は、沖縄本島を指しています。この植物は、恩納村万座毛の海岸断崖の斜面に限定して生育していることが確認されており、非常に希少な存在と言えます。

分類

オキナワスミレは1938年に、天野（金城）鉄夫氏によって発見され、後に植物学者の小泉源一氏によって新種として分類されました。初期の名前は「ハイスミレ」でしたが、後に「マンザモスミレ」、そして現在の「オキナワスミレ」と名付けられています。生物学的には、タチツボスミレの仲間であるとされていましたが、花柱の形状からウラジロスミレの仲間とみなされています。特筆すべきは、染色体数が44であり、他のスミレ属と異なる点です。このため、新たな系統解析を通じての分類の試みも行われています。

生態

オキナワスミレは、隆起したサンゴ礁から形成された石灰岩の隙間に生息しています。植物の高さは通常5cmから10cmほどで、全体は無毛で特徴的なハート形の葉を持っています。葉は肉厚で光沢があり、サイズは長さが13mmから24mm、幅が12mmから22mmです。葉の縁はギザギザしているものの、角は丸く、上面は鮮やかな緑色、下面は淡緑色をしています。葉脈が4本目立つことも特長です。

花は6cmほどの花柄の先端に横向きに咲き、5弁からなる白色または淡紫色の花を持ち、大きさは約13mmです。特に下弁に紫色の筋が見られます。オキナワスミレの花期はおおよそ2月から3月です。根は太く、木質で多くの節を持つ根茎が分岐して岩間を斜めに走るほか、匍匐茎を伸ばしながら新株を形成することで繁殖します。果実は球形で、葉よりも低い位置に実を付け、その中の種子はアリなどによって散布されます。

保護

オキナワスミレが生育する万座毛断崖は、1972年に「万座毛石灰岩植物群落」として県の指定天然記念物となっています。この植物の生息地は限られており、全体の植被率が低いため、国際自然保護連合（IUCN）のレッドリストでは絶滅危惧ⅠA類（Critically Endangered）に分類されています。しかし、日本の環境省のレッドリストにおいては、2006年に新たに大規模な群落が発見され、約200個体が確認されたことから、絶滅危惧ⅠB類（Endangered）として一段階下の評価を受けています。さらに、沖縄県のレッドデータでは、依然として絶滅危惧ⅠA類に分類されています。

このように、オキナワスミレはその独特な姿と生態から注目されており、保護活動や研究が進められています。

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