オスカ

イタリアの小さな巨人：オスカ(O.S.C.A.)の歴史

オスカ(Officine Specializzate Costruzione Automobili)は、1947年から1967年まで、イタリア・ボローニャ近郊で活躍した、小規模ながら名高い自動車メーカーです。その歴史は、マセラティ兄弟と深く関わっています。

1937年、マセラティ兄弟は自らの工場をオルシ兄弟に譲渡。それから10年後、兄弟は再び自動車製造の世界に飛び込み、小排気量スポーツカーに特化したオスカを設立しました。サン・ラッザロ・ディ・サーヴェナに拠点を構え、レースで名を馳せることになるのです。

MT4と栄光の軌跡

1948年、オスカの最初のモデルとなるMT4バルケッタが誕生します。わずか1,092ccのDOHCエンジンながら、72馬力を発揮。1.1リットル級のレースで圧倒的な強さを示し、ルイジ・ヴィッロレージ選手が操縦したMT4は、1948年のナポリ・グランプリを制覇しました。

アーダ・パーチェ率いるチームは、MT4で数々の勝利を収めます。特にタルガ・フローリオでの優勝は、オスカの技術力の高さを証明する金字塔となりました。その後も、排気量を拡大し、92馬力、110馬力、120馬力、そして140馬力へと進化を遂げます。

美しいボディとパワフルなエンジン

フルア、ミケロッティ、ザガート、ヴィニャーレといった、当時のイタリアを代表するカロッツェリア（ボディメーカー）とのコラボレーションにより、オスカの車体は、その美しいデザインとスポーティーな走りを両立させました。ザガートが手がけた1600GTはその代表例と言えるでしょう。

DOHC 2リットルエンジンを搭載したMT4は、165馬力を発揮。世界選手権やミッレミリアといった、世界最高峰のレースへの挑戦を可能にしました。スターリング・モスが操縦したMT4は、セブリング12時間レースでも勝利を収めるなど、その実力は世界的に認められました。

フィアットへのエンジン供給

オスカのエンジンは、その信頼性と性能から、フィアットにも採用されました。1,491cc、後に1,568ccに拡大されたエンジンは、フィアット1500S、1600Sに搭載され、多くのドライバーにその性能を体感させることとなります。

そして終焉と、幻の復活

高齢となったマセラティ兄弟は、1964年末にオスカの活動をMVアグスタに譲渡。1967年、オスカは歴史に幕を閉じました。しかし、その名は、多くの愛好家の記憶に深く刻み込まれることとなります。

1998年、日本の実業家、藤田尚三氏によって、O.S.C.A. TOURINGグループが設立され、オスカは「復活」を宣言しました。ニューモデル「ドロモス」の開発も発表され、スバル製の水平対向4気筒2.5リッターエンジンを搭載、エルコーレ・スパーダによるデザイン、元アバルトの技師マリオ・コルッチによる技術監修、そしてトゥーリングによるボディワークという豪華な布陣が組まれました。しかし、この新生オスカは、発売には至りませんでした。

オスカは短い歴史の中で、数々の名車を生み出し、イタリアの自動車史に燦然と輝く存在となりました。その技術力とデザインセンスは、現在でも多くの自動車愛好家から高い評価を受けています。

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