オスロエス1世

オスロエス1世：ローマ帝国の侵攻に直面したパルティア王

オスロエス1世（生年不詳 - 129年、在位109年 - 129年）は、アルサケス朝パルティアの王です。彼の治世は、ローマ帝国との激しい戦いと、国内の分裂によって特徴づけられます。

生涯と即位

オスロエス1世は、ヴォノネス2世の息子であり、ヴォロガセス2世とパコルス2世の弟でした。パコルス2世の死後、パルティアの東部ではヴォロガセス3世が王位を宣言し、勢力を確立していました。オスロエス1世は、これに対抗するために、バビロニアを中心とする西部で勢力拡大を図りました。

アルメニアを巡る対立

オスロエス1世は、アルメニア王国への影響力を行使しようとしました。110年、甥のアクシダレスをアルメニア王に擁立し、113年にアクシダレスが亡くなると、兄弟のパルサマシリスを後継として据えました。これは、アルサケス家の人物をアルメニア王とし、その上でローマに臣従するという、ローマ帝国との間の合意を無視するものでした。

この動きは、ローマ帝国のトラヤヌス帝を刺激し、113年にパルティア遠征を引き起こしました。114年、パルサマシリスは殺害され、アルメニアはローマ帝国に併合されました。

ローマ帝国の侵攻

115年、トラヤヌス帝はバビロニアに進軍し、オスロエス1世は弟のミトラダテス4世とその息子のシナトルケス2世と共にローマ軍に応戦しましたが、敗北を喫しました。116年には、首都クテシフォンがローマ軍に占領されるという事態に陥りました。

オスロエス1世の息子パルタマスパテスは人質としてローマに送られていましたが、トラヤヌス帝によってパルティア王に指名されました。しかし、ミトラダテス4世とシナトルケス2世はこれに強く反発し、ローマ軍と戦いましたが、再び敗北しました。トラヤヌス帝はペルシア湾岸まで到達し、バビロニア全土がローマ軍に占領されました。

ローマ軍の撤退と王位の回復

117年にトラヤヌス帝が死去し、ハドリアヌス帝が後を継ぐと、状況は一変しました。ハドリアヌス帝はバビロニアなどの占領地を放棄し、傀儡として擁立されたパルタマスパテスは国内の支持を得られず、ローマ領へと逃亡しました。これにより、オスロエス1世は再び王位を取り戻すことができました。

ヴォロガセス3世との対立と死

しかし、ローマ帝国に対する大敗北によって、パルティア東部を支配するヴォロガセス3世に対する優位性は失われました。アトロパテネ王国など、領土の多くはヴォロガセス3世の支配下に入りました。ヴォロガセス3世もまた、アラン人の侵入などに対応を迫られており、オスロエス1世は王位を維持したまま、129年に死去しました。彼の死後、弟のミトラダテス4世が王位を継承しました。

オスロエス1世の治世は、ローマ帝国との戦いと国内の分裂に翻弄された時代でした。彼の苦難は、パルティアの衰退を象徴するものとして、歴史に刻まれています。

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