オットー・ニコライ

カール・オットー・エーレンフリート・ニコライ

カール・オットー・エーレンフリート・ニコライ（Carl Otto Ehrenfried Nicolai, 1810年6月9日 – 1849年5月11日）は、19世紀のドイツを代表する作曲家、指揮者です。彼は、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の前身であるフィルハーモニッシュ・アカデミーの創設者として、またシェイクスピアの喜劇に基づくオペラ『ウィンザーの陽気な女房たち』の作曲家として、その名を音楽史に刻んでいます。ニコライは、5つのオペラ作品のほか、交響曲、管弦楽曲、合唱曲など、幅広いジャンルにわたる作品を残しました。

生涯

幼少期

ニコライは、プロイセン王国のケーニヒスベルク（現在のロシア、カリーニングラード）で、音楽家の父カール・エルンスト・ダニエル・ニコライと母クリスティアーネ・ヴィルヘルミーネ・ラウバーの長男として生まれました。幼少期は両親の離婚により、里親の家に預けられるなど、複雑な家庭環境で育ちました。しかし、音楽の才能は早くから開花し、父親は息子を神童として育てようとしました。その厳しすぎる教育に耐えかねたニコライは、16歳で家を飛び出し、スタルガルトへと逃れました。

音楽家としての歩み

1833年には交響曲第1番を初演し、ドイツ国内で初期の成功を収めました。20歳になると、ベルリンでカール・フリードリヒ・ツェルターの指導を受け、教会音楽を中心に学びました。また、ベルリン・ジングアカデミーでは、ツェルターやフェリックス・メンデルスゾーンらと共にバッハの「マタイ受難曲」を蘇演するなどの活動も行いました。

ローマ、ウィーン、ベルリンでの生活

1833年、ニコライはローマのプロイセン大使館のオルガニストに就任し、イタリア音楽に触れる機会を得ました。当初はイタリアオペラに関心がなかったものの、イタリアでの経験を通じて、その魅力に目覚め、イタリア風のオペラ作曲に挑戦するようになります。1837年にはウィーンのケルントナートーア劇場の楽長に就任しますが、その後再びイタリアに戻り、オペラ作曲に専念しました。

1840年に『神殿の騎士』で国際的な成功を収め、その後もオペラの作曲依頼が続きました。しかし、1841年にミラノ・スカラ座で初演された『追放された男』は不評に終わり、ニコライは大きな挫折を味わいます。その後、ウィーンで『神殿の騎士』を指揮したことがきっかけでウィーン宮廷歌劇場の初代指揮者に選ばれ、1842年にはウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の前身であるフィルハーモニッシュ・アカデミーを創設しました。

1844年、ベルリンの宮廷礼拝堂楽長であったメンデルスゾーンが退任したため、ニコライが後任に推されましたが、すぐにベルリンへ拠点を移すことはありませんでした。ウィーンでは、オペラの作曲義務を負っていましたが、適切な台本を見つけるのに苦労しました。その結果、オペラ『追放された男』はウィーンで成功を収めましたが、スカラ座で不評だった作品と同じタイトルだったため、ニコライの複雑な心境が伺えます。

晩年と死

ニコライは1847年にベルリンの合唱団の指揮者およびロイヤルオペラハウスの楽長に任命されました。しかし、喜歌劇『ウィンザーの陽気な女房たち』の初演から約2ヶ月後、ベルリンの王立歌劇場・宮廷礼拝堂楽長就任の2日前にあたる1849年5月11日に脳梗塞で急逝しました。その死は音楽界に大きな衝撃を与えましたが、死後、プロイセン王立芸術アカデミー会員に選出されました。

作品

ニコライは、オペラ、交響曲、管弦楽曲、合唱曲など、幅広いジャンルにわたる作品を遺しました。その中でも特に有名な作品は以下の通りです。

オペラ

『ロザムンダ・ディンギルテッラ』（1839年）
『神殿の騎士』（1840年）
『オドアルドとジルディッペ』（1841年）
『追放された男』（1844年）
『ウィンザーの陽気な女房たち』（1849年）

交響曲

交響曲第1番 ハ短調
交響曲第2番 ニ長調

管弦楽曲

クリスマス序曲「天より高く」
ピアノと管弦楽のための「ノルマ」による華麗なる変奏曲
クラリネットと管弦楽のための「夢遊病の女」の主題による華麗なる変奏曲
コラール「神はわがやぐら」による教会祝典序曲

宗教音楽

テ・デウム
ミサ曲
詩篇

合唱曲

プロイセンの声
6つの四声歌曲
王の歌

歌曲

夕べが優しく
羊飼いの5月
別れ
永遠にあなたのもの

ピアノ曲

6つの華麗なダンス
奇想ロンド
ソナタ ニ短調
月のワルツ
練習曲「さようなら、リスト」

映画

『ファルスタッフ・イン・ウィーン』(1940年) - レオポルト・ハイニッシュ主演

外部リンク

オットー・ニコライの楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト
* www.musicandhistory.com 1831〜1840年 (PDF)

ニコライの作品は、そのメロディアスな旋律と豊かな和声、そして劇的な表現力が特徴です。特にオペラ『ウィンザーの陽気な女房たち』は、彼の喜劇的な才能を最大限に発揮した傑作として、今日でも広く愛されています。彼の音楽は、19世紀のドイツ音楽における重要な遺産として、後世に受け継がれています。

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