オニール八菜

オニール八菜：輝けるバレリーナの軌跡

オニール八菜（Hannah O'Neill）は、東京都世田谷区出身のバレエダンサー。3歳でバレエを始め、その才能を開花させ、数々の国際的な舞台で目覚ましい活躍を見せています。2023年には、名誉あるパリ・オペラ座バレエ団のエトワールに任命され、その実力と美貌で世界中の観客を魅了し続けています。

幼少期から才能開花まで

1993年1月8日、ニュージーランド人のラグビー選手であるクリス・オニールと日本人の母親の間に生まれた八菜。名前の由来は、8日生まれであることと、英語でも発音しやすいことによります。3歳からバレエを始め、岸辺光代に師事。幼い頃から運動神経が良く、乗馬やスキー、走高跳にも親しんでいました。岸辺は当時の八菜を「小柄で、目がきょろきょろしていてネズミさんみたい」と回想していますが、その才能を見抜き、厳しくも愛情深い指導を行いました。

8歳の時、父親の故郷であるニュージーランドに移住。バレエへの情熱を諦めることなく、マウント・エデン・バレエ・アカデミーでバレエを続けました。その後も、夏休みを利用して日本に戻り、岸辺のもとでレッスンを受ける日々を送りました。日本とニュージーランドを行き来する生活は、友達に会える楽しみもあり、苦には感じなかったといいます。コンクールにも積極的に参加し、徐々にその才能を開花させていきました。

パリ・オペラ座バレエ団への挑戦

幼い頃からパリ・オペラ座バレエ学校とバレエ団に憧れを抱いていたオニールは、13歳頃にバレエ学校宛にビデオを送りましたが、返答はありませんでした。しかし、2007年にユース・アメリカ・グランプリ（YAGP）で好成績を収め、オーストラリア・バレエ学校のスカラシップを獲得。2008年、同校にフルタイムの学生として入学し、本格的にバレエに取り組み始めました。

オーストラリア・バレエ学校在学中の2009年には、ローザンヌ国際バレエコンクールで1位（スカラシップ）を獲得。2010年にもYAGPでシニア女子の部1位に入賞するなど、着実に実力をつけていきました。YAGPでの活躍がきっかけとなり、パリ・オペラ座バレエ団への入団オーディションを受けることを決意します。

2011年、オーストラリア・バレエ学校を首席で卒業。パリ・オペラ座バレエ団の入団オーディションを受け、4位という結果でしたが、シーズン契約のオファーを受け、念願の入団を果たしました。入団当初は言葉の壁やスタイルの違いに苦労しましたが、持ち前の努力と才能で克服。2013年には正規団員となり、その後はコリフェ、スジェと順調に昇進を重ねていきました。

国際舞台での活躍とエトワールへの道

2014年、ヴァルナ国際バレエコンクールで銀賞（金賞該当者なしのため同年の最高賞）を受賞。2015年には『白鳥の湖』で主役デビューを果たし、観客や批評家から高い評価を受けました。2016年1月にはプルミエール・ダンス―ズに昇格。同年、バレエ界のアカデミー賞といわれるブノワ賞を受賞し、その名声を確固たるものとしました。

その後も、『パキータ』のタイトル・ロールや『ジゼル』のミルタ、『ラ・バヤデール』のガムザッティなど、数々の重要な役を踊り、その才能を発揮。ウィリアム・フォーサイスやジャスティン・ペックなどのコンテンポラリー作品にも挑戦し、活躍の場を広げています。

そして2023年3月2日、『バレエ・インペリアル』に出演後、ついにエトワールに任命。長年の夢を実現させました。パリ・オペラ座バレエ団において、外国人ダンサーがエトワールに任命されるのは非常に稀なことであり、オニールの偉業は特筆に値します。

人物像と評価

オニールは、日本とニュージーランドの二つの祖国を持つことを誇りにしており、「どちらの国も古里だと思っています」と語っています。日本の成人式には母親から譲られた振袖姿で出席し、あんこなどの和菓子を好むなど、日本文化への愛着も持ち続けています。

恩師である岸辺光代は、オニールについて「賞をいただいても慢心するような子じゃない。もっと成長すると思いますよ」と将来性を高く評価。パリ・オペラ座バレエ団芸術監督のオーレリー・デュポンも「とてもいいダンサー」とその存在に注目しています。

バレエ評論家のジェラール・マノニは、オニールの『ジゼル』について「これまでの多くのダンサー以上にかぼそく繊細だった」、『白鳥の湖』については「完成したバレリーナの振る舞いを見せ、すでに美しく成熟し、なかでも型には満足のいく厳密さがあった」と評しています。

オニール八菜は、その才能、努力、そして謙虚な人柄で、世界中のバレエファンを魅了し続けています。今後の更なる活躍が期待される、まさに現代を代表するバレリーナの一人です。

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