オプテンノール (船)

オプテンノールの数奇な運命

オプテンノールは、1927年にオランダ王立郵船会社によって建造された客船です。当初はオランダ領東インド方面への航路で活躍していましたが、第二次世界大戦が勃発すると、その運命は大きく変わりました。太平洋戦争開戦後、オランダ海軍に徴用され病院船として改装されたものの、スラバヤ沖海戦で日本海軍に拿捕されてしまいます。その後、日本の病院船として「天応丸」「第二氷川丸」と名前を変え、終戦を迎えますが、直後に自沈処分という最期を迎えました。この船の生涯は、戦時下の国際関係や、戦後処理の複雑さを物語るものであり、数々の謎と伝説に彩られています。

建造と初期の運用

オプテンノールは、姉妹船プランシウスに次いで、アムステルダムのネーデルランド造船所で建造されました。1927年に竣工したこの船は、当時としては珍しい垂直に切り立った船首と、一本の太い煙突が特徴的な外観をしていました。内装は姉妹船と同様に豪華で、広いサロンや黒檀の調度品を備えており、客船としての快適性を追求していました。オプテンノールは、オランダ領東インドと東南アジアを結ぶ航路に就航し、現地のオランダ人を中心に親しまれていました。

第二次世界大戦と病院船としての転換

1940年にオランダ本国がドイツに占領されると、植民地政府と駐留軍は亡命政府の指揮下に入りました。太平洋戦争が開戦すると、オプテンノールはオランダ海軍に徴用され、病院船としての改装を受けました。レントゲン室や火葬設備が追加され、病院船として運用されることになったのです。しかし、1942年2月、スラバヤ沖海戦で日本の駆逐艦に臨検を受け、拿捕されてしまいます。

日本海軍による運用と変貌

拿捕されたオプテンノールは、その後日本海軍によって運用されることになりました。まず「天応丸」と改名され、特設病院船として横須賀鎮守府に所属。この際に、煙突の形状が変更され、船尾甲板に構造物が追加されました。その後、ラバウルやトラック島など南方方面への傷病兵輸送に活躍しましたが、1944年には船首をクリッパー型に変更、さらに擬装用の第二煙突を追加するなど、外観が大きく変更されました。同時に「第二氷川丸」と改名されました。

「第二氷川丸」となってからも、シンガポール方面への航海を続けましたが、終戦間近の1945年8月19日に、舞鶴沖で自沈処分となりました。この自沈は、連合国への賠償責任を回避するために、秘密裏に行われたものと考えられています。

戦後の賠償問題と財宝伝説

終戦後、オランダ政府はオプテンノールの消息を日本政府に照会しました。当初、日本政府は虚偽の回答で逃れようとしましたが、サンフランシスコ講和条約締結後、オランダ政府は賠償を要求。長年の交渉の末、1978年に日本政府が見舞金を支払うことで決着しました。また、オプテンノールには「自沈時に多量の財宝を積んでいた」という噂があり、沈没船調査の対象となりました。金塊や貴金属が積まれていたという説がありましたが、その後の調査では確認されていません。2017年には海底の残骸が発見され、NHKによってドキュメンタリー番組が制作されました。

オプテンノールの歴史的意義

オプテンノールの生涯は、客船から病院船、そして軍艦へと変遷した、激動の時代を象徴するかのようです。また、その自沈は、戦後の混乱と複雑な国際関係を示す出来事であり、今なお多くの謎と伝説に包まれています。オプテンノールの辿った数奇な運命は、歴史の教訓として、我々に多くのことを教えてくれるでしょう。

主な参考文献

アジア歴史資料センター（公式）（防衛省防衛研究所）
岡本孝太郎『舞廠造機部の昭和史』
* 三神國隆『海軍病院船はなぜ沈められたか―第二氷川丸の航跡』

これらの資料からも、オプテンノールの歴史を深く理解することができます。

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