オペル・インシグニア

オペル インシグニア：欧州を代表する中型車の系譜

オペル・インシグニアは、ドイツの自動車メーカーであるオペル（現在はStellantis傘下）が2008年に発表した中型乗用車です。日本市場にも輸入され、高い人気を博しました。オペル・ベクトラの後継車種として登場したインシグニアは、その広い室内空間と先進技術、そして多様なボディバリエーションで知られています。

初代インシグニア (インシグニアA、2008年-2016年)

初代インシグニアは、GMのイプシロンIIプラットフォームを採用。全長4830mm、ホイールベース2730mmというサイズながら、前モデルであるベクトラCよりも室内空間を拡大し、快適な乗車を可能にしました。

特に注目すべきは、世界初の市販車搭載となる道路標識認識システムです。これはカメラを用いて道路標識を認識し、ドライバーに情報を提供する画期的な機能でした。さらに、全車種が当時最新のユーロ5排気ガス規制をクリアするなど、環境性能にも配慮されていました。

ボディタイプは、4ドアセダン、5ドアハッチバック、ステーションワゴンの「スポーツツアラー」、そしてスポーツツアラーをベースにSUV風のデザインを取り入れた「カントリーツアラー」の4種類が用意されました。

販売地域はヨーロッパにとどまらず、中国や北米市場ではビュイック・リーガルとして、オセアニア市場ではホールデン・インシグニアとして販売されました。南米チリ市場では、シボレー・ベクトラとして参考出品されましたが、市販には至りませんでした。

搭載エンジンは、ガソリンエンジンが1.6Lから2.8L V6まで、ディーゼルエンジンが2.0Lをベースに複数のバリエーションが用意され、幅広いニーズに対応していました。トランスミッションは6速MTまたはATが選択可能でした。また、高性能モデルとして、V6ターボエンジンを搭載した「OPC」もラインナップに加わりました。OPCは320馬力を誇り、6速MTと四輪駆動システムを組み合わせたスポーティな走りを提供しました。

2代目インシグニア (インシグニアB、2017年-2022年)

2017年、インシグニアはフルモデルチェンジを行い、2代目へと進化しました。プラットフォームはシボレー・マリブと同じ「E2XX」へと刷新され、ボディサイズは一回り大型化されました。

エンジンは、ガソリンが1.5Lと2.0Lの直噴ターボ、ディーゼルが1.6Lと2.0Lの直噴ターボ（BiTURBO設定あり）が用意されました。トランスミッションはガソリンエンジンが9速ATに進化しました。

ボディタイプは、4ドアセダンが廃止され、5ドアハッチバック（ノッチバック風）、ステーションワゴンの「スポーツツアラー」、クロスオーバーSUVの「カントリーツアラー」の3種類となりました。

販売地域においても、オセアニア市場ではホールデン・コモドアとして販売され、ビュイック・リーガル（北米）と共に展開されました。北米市場では、5ドアハッチバックとカントリーツアラー（Tour X）の2種類のボディタイプが設定されました。

2020年にはカントリーツアラーがラインナップから廃止され、グランスポーツとスポーツツアラーの2種類のみとなりました。そして2022年、インシグニアは生産終了。SUV市場の拡大を背景に、オペルはSUV開発に注力することとなりました。

まとめ

オペル・インシグニアは、広い室内空間、先進技術、多様なボディバリエーション、そして高い走行性能を兼ね備えた、欧州を代表する中型車の1台でした。その歴史は、自動車史に重要な足跡を残しています。

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