オマル・ムフタール

オマル・アル＝ムフタール：リビア独立の父

オマル・アル＝ムフタール（1862年8月20日 - 1931年9月16日）は、リビアの独立運動における象徴的な人物であり、「リビア独立の父」として知られています。彼はイタリアの植民地支配に対し、20年以上にわたり抵抗を続けました。

生涯

ムフタールは、オスマン帝国領ベンガジ近郊のジャンズール村で生まれました。幼少期からクルアーンを学び、16歳で父を亡くした後、サヌーシー教団の拠点であるジャグブーブの大学で8年間学びました。卒業後は故郷に戻り、イマームとしてクルアーンを教えていました。

イタリアとの対立

1911年、伊土戦争が勃発し、リビアは戦火に見舞われました。イタリア軍はトリポリを占領し、サヌーシー教団はオスマン軍に協力してイタリア軍と戦いました。ムフタールもこの戦いに参加し、以降20年にわたりイタリア軍と戦うことになります。

1912年、講和条約が結ばれ、トリポリタニア、フェザーン、キレナイカがイタリアに割譲されました。しかし、サヌーシー教団はイタリア軍との戦いを継続しました。1920年にはキレナイカの支配権を認められましたが、1922年にムッソリーニ政権が成立すると対立が激化し、指導者のムハンマド・イドリースはエジプトに亡命しました。

反イタリア抵抗運動

イドリースはムフタールをリビア司令官に任命し、彼は対イタリア運動の指揮を執ることになりました。ムフタールはキレナイカの地形と砂漠戦に精通しており、各地の反イタリアゲリラを指揮下に置き、イタリア軍の補給ルートや通信施設を攻撃しました。

1925年、イタリア軍の反撃により勢力が減退すると、ムフタールは戦術を変更し、ベドウィンやエジプトからの支援を取り付けました。1926年のベンガジでの戦闘では敗北しましたが、イタリア軍に大きな損害を与えました。1927年から1928年にかけて、反イタリア勢力は勢力を拡大し、多くのイタリア兵を殺害しました。

1929年、リビア総督のピエトロ・バドリオは和平を提案しましたが、停戦合意後にイタリア兵が殺害されたため、戦闘が再開されました。1930年、ムッソリーニは徹底的な鎮圧を行うため、ロドルフォ・グラツィアーニを後任の副総督に任命しました。グラツィアーニはムフタールへの協力を阻止するため、宗教指導者の資産を接収し、ベドウィンを強制収容所に隔離し、エジプトとの国境を封鎖しました。また、ゲリラの拠点であるオアシスを爆撃し、壊滅させました。

捕縛と処刑

1931年9月11日、ムフタールはスロンタでの戦闘で負傷し、イタリア軍に捕縛されました。グラツィアーニはムフタールを裁判にかけ、死刑判決が言い渡されました。9月16日、ムフタールは「私たちは神のものであり、私たちは神に還されなければならない」というクルアーンの一節を唱え、民衆の目の前で絞首刑に処されました。彼の死後、抵抗運動は衰退し、1932年にリビアはイタリアに平定されました。

ムフタールとカダフィ

ムフタールは「リビア独立の父」として尊敬されており、カダフィ政権下のリビアでは最高紙幣の10ディナール札に肖像が使用されていました。カダフィはムフタールとイタリア軍の戦いを描いた映画『砂漠のライオン』を制作しました。

2009年、カダフィはムフタールの息子と共にローマを訪問し、ムフタールがイタリア軍に捕縛された時の写真を胸に付けてベルルスコーニ首相と会談しました。2011年のリビア内戦では、ムフタールは自由の象徴として反カダフィ派のポスターや旗に用いられました。

ムフタールの生涯は、リビアの独立と自由を求める人々の心に深く刻まれています。

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