オリアーナ・ファラーチ

オリアーナ・ファラーチ：不屈のジャーナリスト、その生涯と遺産

オリアーナ・ファラーチ（1929年6月29日 - 2006年9月15日）は、イタリアを代表するジャーナリスト、作家、そして政治インタビュアーです。彼女の活動は、単なる報道にとどまらず、常に社会への深い洞察と、自身の信念に基づいた強い主張を伴っていました。

生涯

ファラーチは、イタリアのフィレンツェで生まれました。第二次世界大戦中には、反ファシズム運動に参加し、若くして社会に関わることになります。1946年には、新聞『Il mattino dell'Italia centrale』の特派員となり、ジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせました。

1967年初めには、従軍記者としてベトナム戦争を取材。戦場の最前線に身を置き、そこで見た現実を世界に伝えました。また、印パ戦争にも赴き、紛争の悲惨さを目の当たりにしました。彼女の報道は、常に当事者の視点に立ち、戦争の残酷さ、そして人間の尊厳を描き出していました。

ファラーチは、その卓越した取材力と、インタビュー対象の本質を引き出す手腕で、数多くの国際的な指導者や著名人にインタビューを行いました。その対象は、ヘンリー・キッシンジャー、モハンマド・レザー・パフラヴィー、ルーホッラー・ホメイニー、レフ・ヴァウェンサ、ヴィリー・ブラント、ズルフィカール・アリー・ブットー、ウォルター・クロンカイト、ムアンマル・アル＝カッザーフィー、フェデリコ・フェリーニ、サミー・デイヴィスJr.、鄧小平、ヤーセル・アラファート、インディラ・ガンディーなど、多岐にわたります。

彼女のインタビューは、単なる情報収集ではなく、相手の人間性や思想に深く切り込むものでした。時に挑発的とも言える質問を投げかけ、相手の本音を引き出すことで、読者に新たな視点を提供しました。

ホメイニ師へのインタビュー後に出版された『Ayatollah』は、イランで発禁処分となりました。彼女の鋭い視点と批判精神は、時に権力者からの反発を招きましたが、それでも自身の信念を曲げることはありませんでした。

晩年はニューヨークで過ごし、肺がんとの闘病生活を送りました。その闘病生活は、『the Other One』で語られています。2006年9月14日、亡くなる前日に故郷のフィレンツェに戻り、翌日、同地の病院で息を引き取りました。

邦訳された著書

『愛と死の戦場 ベトナムに生の意味を求めて』（1974年）
『生まれなかった子への手紙』（1977年）
『ひとりの男』（1982年）
『戦争と月と』（2015年）

これらの著書は、彼女のジャーナリストとしての経験や、人生に対する深い洞察が込められています。特に『生まれなかった子への手紙』は、妊娠中絶をテーマにした作品で、大きな反響を呼びました。

評価と遺産

フェルッチオ・デ・ボルトリ（コリエーレ・デラ・セラ紙の元編集長）は、彼女を「我々の最も有名な女性作家」と呼び、ロサンゼルス・タイムズ紙は彼女を「事実上世界の誰もが否定しないジャーナリスト」と評しました。

彼女の死後も、その作品は読み継がれ、多くの人々に影響を与え続けています。彼女のジャーナリズムは、真実を追求し、権力に屈しない強い意志を持つことの重要性を教えてくれます。また、その文学作品は、人間の尊厳や愛、そして生と死について深く考えさせてくれます。

オリアーナ・ファラーチは、20世紀を代表するジャーナリストの一人として、その名前は永遠に歴史に刻まれるでしょう。

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