オリョール (宇宙船)

オリョール：ロシアの次世代宇宙船

オリョール（Orel）は、ロスコスモスが開発を進めている次世代宇宙船です。かつてはPTK NPやPPTSという名称で呼ばれていましたが、2016年にフィディラーツィヤと命名され、2019年に現在のオリョールへと改名されました。

開発の背景

50年以上もの間、ソ連・ロシアの有人宇宙飛行を支えてきたソユーズ宇宙船は、設計の老朽化が否めません。オリョールは、そのソユーズを代替するために開発されている新型有人宇宙船であり、開発はソユーズと同じくRKKエネルギアが担当しています。

欧州宇宙機関（ESA）との共同開発計画CSTSが中止になったことを受け、ロシアは独自にPPTS計画を推進。国内の宇宙産業に新型有人宇宙船の提案を求め、2013年12月19日にRKKエネルギアとの間で開発契約が締結されました。

概要

オリョールは、ソユーズよりも大型で、最大6人の宇宙飛行士を収容できます。ソユーズが球形の軌道船、釣鐘型の帰還船、機械船の3要素で構成されているのに対し、オリョールは円錐台形のカプセルと機械船のみで構成されています。カプセルの大部分は再使用可能であり、月周回軌道や火星への飛行も視野に入れて開発が進められています。

開発の歴史

RKKエネルギアが提案したクリーペルは、コストを重視した設計でしたが、ロシア政府と海外からの経済支援が不可欠でした。そのため、クリーペルを海外のパートナーに売り込むことを目指しました。

NASAがオリオン宇宙船の開発を進めていたため、ロシアはヨーロッパをパートナーとして選び、ESAに協力を打診しました。しかし、ESAはロシアの設計したクリーペルを採用せず、共同開発を主張したため、CSTSが計画されました。

CSTSは初期検討が行われたものの、ESAが欧州補給機を有人型に発展させることを決定したため、計画は中止となりました。その後、ロシア連邦宇宙局はクルニチェフ国家研究生産宇宙センターから、アンガラ・ロケットで打ち上げ可能なTKSを基にした次世代有人宇宙船の提案を受け、新型有人宇宙船の独自開発を決定しました。

PPTS計画の始動

2009年、ロシア連邦宇宙局は次世代有人宇宙船の要求仕様を確定させ、RKKエネルギアとクルニチェフからの提案を受領。これがPPTS計画の始まりとなりました。入札には2社のみが参加し、宇宙局は発注先の選定に入りました。

2016年1月には、新型宇宙船の名称がフィディラーツィヤに決定。国民投票では3位でしたが、ロスコスモス内での議論の結果、採用されました。

2019年には、ロスコスモスのCEOが「宇宙機は女性名詞で呼ばれるべきでない」と発言し、物議を醸しましたが、最終的に製造される最初の宇宙機をオリョールと命名することに決定しました。

設計

オリョールは、地球周回、月探査、無人物資輸送など、複数の形式が構想されています。地球周回機は重量12トン、乗員6名、貨物搭載量500キログラム以上。月探査機は重量16.5トン、乗員4名、100キログラムまでの貨物を地上との間で往還できます。無人物資輸送機は、2,000キログラム以上の貨物を地球周回軌道へ輸送可能です。

乗員カプセルの設計要件では、大気圏内での飛行に環境上安全な推進剤を使用すること、15年間の設計寿命において最大10回再使用可能であることが規定されています。また、ソユーズとは異なり、減速をロケットモータのみで行うことが提案されています。

打ち上げロケット

オリョールの打ち上げロケットとしては、ソユーズ5が有力視されています。

過去の候補

ルーシ-Mという新型ロケットも開発が検討されましたが、2011年に開発中止となりました。また、アンガラA5も候補に挙がっていましたが、ソユーズ5が選定されました。

関連項目

クリーペル
CSTS

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