オルスク

オルスク：二つの大陸に跨る都市の歴史、産業、文化

オルスクは、ロシア連邦オレンブルク州に位置する都市で、ウラル山脈の南部に位置しています。地理的には、ヨーロッパとアジアの境界をなすウラル川に跨っており、「二つの大陸に跨る町」として知られています。2024年4月には大規模な洪水に見舞われましたが、その歴史は古く、多様な文化が育まれてきました。

地理

オルスクはオレンブルク州で2番目に大きな都市であり、州都オレンブルクからは南東へ約1,700km離れています。カザフスタンとの国境に近く、ウラル川とオリ川が合流する地点に位置しています。ウラル川はこの合流地点で流れの向きを変え、最終的にはカスピ海へと注ぎ込みます。

旧市街はウラル川の南岸（アジア側）に位置し、新市街は対岸のヨーロッパ側に広がっています。2024年の洪水では、市街地のほぼ全域が浸水する被害を受けました。

歴史

オルスクの歴史は1735年 8月15日に遡ります。ロシア帝国がウラル南部を征服する過程で、イヴァン・キリロフ率いる遠征隊がウラル川左岸に要塞を建設したのが始まりです。この要塞は当初「オレンブルク」と呼ばれ、ロシア帝国の国境としての重要性を持っていました。しかし、要塞建設に反発したバシキール人による蜂起が発生し、鎮圧されました。1739年には、要塞は正式にオルスクと改称されました。

オルスク要塞は、軍の駐屯地としてだけでなく、カザフ人や中央アジアの民族との交易の場としても機能しました。その後、オレンブルクの建設や国境線の拡大により、国境の町としての重要性は薄れましたが、中央アジアへの交易拠点としての役割は残りました。1847年から1848年にかけては、詩人・画家のタラス・シェフチェンコが流刑地としてオルスク要塞に滞在しています。

1861年に要塞は廃止されましたが、コサックの人口が増加し、オレンブルク・コサック軍の拠点が置かれました。1865年には市の地位を得て、地方の中心都市として発展しました。1870年代には鉄道が開通し、オルスクは急速な成長を遂げ、畜牛や穀物の取引、農産物の加工、手工業などが盛んになりました。特に、オレンブルク・ショールは名産品として知られ、多くの女性がその生産に従事しました。1913年までに人口は21,000人を超え、1917年には11の教会とモスク、16の学校が存在していました。

ロシア内戦期には、オルスクは3ヶ月間の封鎖に耐え、四度にわたり対立勢力の手に渡るなど、激しい戦闘が繰り広げられました。1930年代には、豊富な鉱物資源を活用した重工業が発展し、第二次世界大戦（大祖国戦争）中には疎開してきた人々や工場によって、さらに発展しました。

産業

オルスクはオレンブルク州における重要な産業の中心地です。冶金、機械、石油化学、食品工業、軽工業などが主要な産業であり、大規模な冶金工場「Yuzhuralnikel」や石油化学工場「Orsknefteorgsintez」などが存在します。周辺地域では、銅、クロム、ニッケルなどの鉱物資源が豊富に埋蔵されており、ポルコブニク山から採掘される碧玉は、その多様な色と形で珍重されています。

交通

オルスクは、オレンブルク-サラトフ間およびエカテリンブルク-チェリャビンスク間の鉄道が通る交通の要衝でもあります。カザフスタンのアクトベへ向かう高速道路も利用可能です。市内にはバスや路面電車（オルスク市電）が運行しており、近隣都市への移動手段として利用されています。また、オルスク空港からはモスクワやオレンブルクへの定期便が運航されています。

住民と文化

オルスクの住民の約75%はロシア人ですが、ウクライナ人、タタール人、カザフ人、ヴォルガ・ドイツ人など、多様な民族が暮らしています。

オルスクには、教育学と産業に関する二つの高等教育機関があります。また、州立劇場、地方史博物館、考古学研究所、児童美術館などの文化施設も充実しています。ソビエト連邦崩壊後には、ロシア正教会の聖堂が修復され、美しい姿を取り戻しました。旧市街には1870年から1907年にかけて開発された当時の建築物が残っており、歴史的な景観を楽しむことができます。新市街には新しい劇場や美術館があり、2006年にはローマ・カトリック教会が新設されました。

オルスク周辺には古代の集落跡や墓所などの考古学遺跡が数多く存在し、学術的にも重要な発見がなされています。クマクの墓地跡は青銅器時代に遡り、インド・ヨーロッパ語族の故地がヨーロッパ東部にあるという仮説を裏付ける重要な証拠とされています。また、鉄器時代初期の墓地からは、アケメネス朝ペルシアの支配者アルタクセルクセス1世の名が刻まれた土器などが発掘されています。

オルスクは、産業都市としての側面だけでなく、豊かな歴史と文化を持つ魅力的な都市です。2024年の洪水からの復興を遂げ、更なる発展を遂げることが期待されます。

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