カザフ人

カザフ人について

カザフ人（カザフ語: қазақтар、ロシア語: казахи）は、中央アジアのカザフステップに広がって住むテュルク系の民族です。主にカザフスタンに約800万人が居住し、同国の人口の半数を占めています。さらに、中国の新疆ウイグル自治区やモンゴルなどにも彼らのコミュニティが存在します。特に新疆ではカザフ族（哈萨克族）と呼ばれ、この地域の55の少数民族の一つとして認識されています。自治州としてはイリ・カザフ自治州があり、いくつかの自治県も存在しています。

歴史的背景

カザフ人は元々遊牧民であり、20世紀初頭まで多くの人々が遊牧生活を営んでいました。しかし、1930年代にソ連の影響で大規模な定住化が進み、現在では都市に住む人々や農業を行う人々が増えています。それでも、部族や氏族に対する帰属意識は根強く残っており、彼らのアイデンティティの重要な部分となっています。

カザフ人の名称は、カザフ語の「カザク」に由来し、「独立不羈の者」や「放浪者」といった意味を持っています。カザフは本来、部族集団から独立した遊牧民を指す言葉であり、ロシアの「カザーク」と同じ語源を持っています。

カザフ・ハン国

カザフ人は15世紀に南シベリアから移動し、ムスリムの遊牧民集団であるウズベクから離れて新たな集団を形成しました。1470年頃、バルハシ湖南方でカザフ・ハン国が成立し、ジャニベクとケレイが君主となることから始まりました。この国はシル川を越えて広がり、現在のカザフスタンのほとんどを支配するようになりました。

カザフ・ハン国は分権的な性格を持ち、王家から分かれた各部族に君主が存在しました。18世紀には外敵からの攻撃を繰り返し受け、またロシアの影響が浸透してきます。19世紀に入ると、西部・中部の小ジュズがロシアの統治下に入りました。

部族制度

カザフ人は「ジュズ」と呼ばれる3つの部族連合体に分かれており、それぞれ大ジュズ、中ジュズ、小ジュズと呼ばれています。大ジュズはカザフスタン南東部に居住し、伝統的な文化が色濃く残っています。中ジュズは中央や北東部に位置し、ロシアの影響が強く、都市化が進んでいます。小ジュズは西部に分布し、政治活動にも積極的です。

遺伝的特性

カザフ人の遺伝的背景は、モンゴロイドとコーカソイドが融合した独特の特性を示しています。最新の遺伝子研究によると、Y染色体ハプログループは部族ごとに多様であり、主にモンゴロイド起源を持つ系統が多数を占めることが分かっています。このような遺伝的な特徴は、カザフ人の文化とアイデンティティにも影響を与えていると考えられています。

現代のカザフ人

ソビエト連邦の崩壊後、カザフスタンは独立を果たし、カザフ人は初めて民族国家を持つこととなりました。しかし、彼らの宗教的回帰は他のムスリム民族に比べて限定的であり、政治的にもロシア寄りの傾向が見られます。

カザフ人には多くの著名人が存在し、政治家のヌルスルタン・ナザルバエフやバレーボール選手のサビーナ・アルシンベコバなどがいます。彼らはその文化や歴史を背景に独自のアイデンティティを持ち、今もなお発展を続けています。

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