オルド

オルドとは

オルド（古テュルク語: 𐰇𐱃𐰀）は、モンゴルやテュルク系民族における宿営地を指しており、特にカンや后妃の拠点として機能していました。日本語では、今のところ行宮や宮帳、幕営などと訳されており、ゲル（パオ、ユルト）と非常に似た意味合いを持ちます。

歴史的背景

オルドの存在は、遼の時代に遡ります。このころ、皇帝のもとには一つのオルドが設置され、その維持には州や部族が附属し、租税や兵士を提供していました。皇帝が亡くなった際には、このオルドは后妃に引き継がれ、皇帝の陵墓の護衛や祭祀を担当しました。また、后妃や皇太子がそれぞれ独自のオルドを持つこともありました。

モンゴル帝国及び元王朝やその後の諸ハン国においては、オルドはカアン（皇帝）の専有物として扱われましたが、通常、4つ以上のオルドが設置され、后妃に与えられていました。それぞれのオルドは、后妃への歳賜や貢物で運営されていました。皇帝は、これらのオルドを行き来しながら、主帳で政務を執り行っていました。このようにオルドは大規模な遊牧民集団の中心となり、季節ごとあるいは月ごとにオルドごとに移動して生活していました。

チンギス・カンの時代のオルド

チンギス・カンには38人の后妃がいたとされていますが、その中で皇后となったボルテには第1オルドが与えられ、次いでクランに第2オルド、イェスイやイェスゲン姉妹には第3・第4オルドが管轄されました。また、他の34名の后妃はそれぞれのオルドに分属する形をとっていました。

ジョチ・ウルスの分裂とオルド

ジョチ・ウルスの分裂期には、「金のオルド」「青のオルド」「ノガイのオルド」といった異なる国家が形成され、日本の歴史学では「金帳汗国」や「青帳汗国」といった表現が用いられています。これにより、多様なオルドの役割がより明確となりました。

近代におけるオルドの名残

20世紀に入っても、オルドの概念は続き、特にカザフ人の独立運動によって「アラシュのオルド」（アラシュ自治国）が設立されました。このように、オルドは歴史的に重要な文化と社会のシンボルとして機能し続けています。

参考文献

• - 真杉慶夫「オルド」（『世界歴史大事典 Encyclopedia Rhetorica 3』、教育出版センター、1985年）
• - 森川哲雄「オルド」（『歴史学事典 12 王と国家』、弘文堂、2005年）

関連項目

• - ゲル
• - オルドス部
• - 大オルド
• - 蒼き狼と白き牝鹿シリーズ

このように、オルドはテュルク系およびモンゴル民族の社会において多様な役割を果たしてきた重要な構造であり、その背景には文化的、歴史的な要素が多く内包されています。

もう一度検索