オルフェオ (モンテヴェルディ)

モンテヴェルディのオペラ『オルフェオ』：音楽史における革新

クラウディオ・モンテヴェルディ作曲の『オルフェオ』（L'Orfeo）は、1607年に初演された5幕構成のオペラであり、作曲家が手がけた最初のオペラ作品として知られています。この作品は、16世紀末のフィレンツェで生まれた新しい音楽劇の様式、モノディ様式を基盤としており、オペラ史において重要な位置を占めています。

多様な音楽形式の融合

『オルフェオ』は、当時のマントヴァ公爵ヴィンチェンツォ1世・ゴンザーガのために作曲されました。オペラ以前にも牧歌劇や幕間劇など様々な音楽劇が存在しましたが、モンテヴェルディはこれらの形式に精通し、『オルフェオ』において大胆な音楽的実験を行いました。カメラータによるモノディ様式だけでなく、マドリガーレ、名人芸的な歌曲など、多種多様な要素を混淆させ、和声法においても革新的な試みを展開しました。歌と踊りを結びつけ、有節歌曲形式を取り入れることで、モンテヴェルディはモノディによる音楽劇を、よりオペラに近い形式へと進化させました。

後世への影響

『オルフェオ』には、ダ・カーポ・アリア、有節歌曲、ライトモティーフ、劇的な動機を伴った楽器法、レチタティーヴォなど、後のオペラで用いられる様々な要素がすでに示されています。しかし、バロック・オペラが個人の歌唱を中心とするのに対し、『オルフェオ』では合唱が多用されている点が大きな特徴です。各幕は大規模な合唱で終わり、シンフォニアなどの純粋な器楽曲も多く用いられています。

ペーリの作品が現存する最古のオペラ作品である一方、『オルフェオ』は現代においても上演に耐えうる、最初のオペラと言うことができるでしょう。作曲当時、「オペラ」という言葉はまだ存在せず、モンテヴェルディ自身はこの作品を「音楽による寓話」(favola in musica)と呼んでいました。リブレットは、マントヴァの宮廷書記アレッサンドロ・ストリッジョによって書かれました。

初演とその後

1607年2月24日、マントヴァの公爵邸で初演された『オルフェオ』は、大成功を収めました。その後、クレモナ、トリノ、フィレンツェなどでも上演され、1609年と1615年には総譜が出版されました。しかし、初演時のリブレットと出版された楽譜では結末が異なっており、リブレットではオルフェオがバッコスの巫女たちから逃れる場面で終わるのに対し、楽譜ではアポロが現れてオルフェオを天上に引き上げます。

20世紀の復活上演

モンテヴェルディの死後、『オルフェオ』は一時忘れ去られましたが、19世紀末から20世紀にかけて再評価が進み、ヴァンサン・ダンディやカール・オルフ、パウル・ヒンデミットらによって復元版が制作・上演されました。古楽器を用いた演奏も行われるようになり、ニコラウス・アーノンクールによる演奏は、大きな影響を与えました。現在も『オルフェオ』は繰り返し舞台にかけられ、その音楽的価値が再認識されています。

楽器編成と登場人物

『オルフェオ』は、当時のオペラとしては非常に豊富な楽器編成を誇ります。クラヴィチェンバロ、コントラバス、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、ハープ、キタローネ、オルガン、トロンボーン、コルネットなど、多彩な楽器が用いられています。登場人物は、ムジカ（音楽）、オルフェオ、エウリディーチェ、スペランツァ（希望）、カロンテ、プロセルピナ、プルトーネ、アポロなどです。初演時には、カストラートやテノール、ソプラノなど、様々な声域の歌手が配役されました。

あらすじ

物語は、オルフェオとエウリディーチェの結婚を祝福する場面から始まりますが、エウリディーチェが毒蛇に噛まれて命を落としてしまいます。オルフェオは、愛する妻を取り戻すため、冥界へと旅立ちます。冥界の王プルトーネを感動させたオルフェオは、エウリディーチェを連れて地上に戻ることを許されますが、後ろを振り返ってはいけないという条件が課せられます。しかし、オルフェオは我慢できずに振り返ってしまい、エウリディーチェは再び冥界へと引き戻されます。絶望したオルフェオは、最終的にアポロによって天上に上げられ、永遠の幸福を得るという物語です。

『オルフェオ』は、オペラの歴史における重要な転換点であり、その革新的な音楽とドラマチックな展開は、今日においても多くの人々を魅了し続けています。

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