オレンジ花水

オレンジ花水：世界中で愛される香り高いハイドロゾル

オレンジ花水、別名橙花水、オレンジフラワーウォーターは、ビターオレンジ（ダイダイ）の花びらを水蒸気蒸留することで得られる芳香性の高い液体です。ネロリの精油生産における副産物としても知られており、その優しく華やかな香りは、古くから世界各地で親しまれてきました。

生産と品質

オレンジ花水は、主に地中海沿岸地域や中東、アメリカ、ヨーロッパなどで生産されています。そのため、生産地やブランドによって品質にばらつきが見られます。国際食品規格委員会では、1リットルあたり少なくとも0.3グラムの芳香族化合物を含むことを基準としていますが、高品質なものは0.5～0.6グラム、中には0.9グラムを超えるものもあります。ただし、0.9グラムを超えると飽和濃度を超え、「yeux」（フランス語で「目」の意）と呼ばれる油分が分離することがあります。このyeuxは、モロッコやアルジェリアなど、伝統的にオレンジ花水を使用する国々では、高品質の証とされています。推定年間生産量は1500トンにも上ると言われていますが、正確な数値は不明です。

世界の呼び名

オレンジ花水は、世界各国で様々な呼び名で親しまれています。

英語圏: Orange flower water, orange blossom water
ギリシャ・キプロス: anthonero (ανθόνερο)
マルタ島: Ilma Żahar
スペイン: Agua de azahar
アラビア語: ماء الزهر

多様な用途

オレンジ花水は、その香り高さから、食用、医薬品、化粧品など、幅広い用途に用いられています。

食用

地中海地方では、ジバシエやスペインのキングケーキなど、伝統的な菓子やデザートに欠かせない材料として古くから使われています。北アフリカや中東でも、シロップの香り付けなどに広く利用されています。近年では、西洋料理にも使用されるようになり、ヨーロッパではマドレーヌ、メキシコではウェディングケーキやパン・デ・ムエル、アメリカではスコーンやマシュマロの風味付けなどに用いられています。また、ラモス・ジン・フィズなどのカクテルにも使われています。さらに、中東の硬水特有の臭みや風味を消すために飲料水に添加したり、粘土製の冷却容器qullaに入れた水に添加して保存する用途もあります。アルジェリアやモロッコでは、来客時のおもてなしとして、手を洗うためのフィンガーボウルに用いられることもありました。

医薬品

マルタや北アフリカ、中東諸国では、古くから腹痛の薬として、大人から赤ん坊まで幅広い年齢層で使用されてきました。

化粧品

オレンジ花水は、その爽やかな香りから、香水や香り付き化粧水などの原料として広く使われています。化粧品原料国際命名法（INCI）では、 Citrus Aurantium Amara (Bitter Orange) Flower Water や Citrus Aurantium Dulcis (Orange) Flower Water* として表記されます。

オレンジ花水の歴史と象徴

ギリシャ神話では、最高神ゼウスが妻であるヘラにオレンジの花を贈ったとされ、オレンジの花は結婚の象徴とされています。クレタ島では、結婚式にオレンジ花水を花嫁と式場に振りかけるという伝統がありました。

オレンジ花水は、その豊かな香りだけでなく、歴史や文化、人々の生活に深く根付いた存在と言えるでしょう。今後も、世界中でその魅力が愛され続けることでしょう。

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