オン・ザ・タウン

『オン・ザ・タウン』（原題：On the Town）は、ブロードウェイで生まれ、後に映画化もされた著名なミュージカル作品です。

ミュージカル『オン・ザ・タウン』

この作品は、1944年にブロードウェイで初演されました。音楽は高名な作曲家レナード・バーンスタインが担当し、脚本と歌詞はベティ・コムデンとアドルフ・グリーンが手がけました。1944年12月28日、マックス・ゴバーマン指揮のもと、ニューヨークのアデルフィ劇場で幕を開けました。演出はジョージ・アボット、そして斬新な振付はジェローム・ロビンスが担当しました。初演キャストには、ジョン・バトルズ、クリス・アレキサンダー、ナンシー・ウォーカー、ソノ・オサト、そして脚本・歌詞のコムデンとグリーンも加わっていました。

初演は成功を収め、計462回の上演を記録しました。このミュージカルの革新性は、ダンスとストーリーが深く統合されている点にあります。ロビンスは、多くのバレエシーンや、今日でも象徴的な「イマジナリー・コニーアイランド」を含む数々のダンスナンバーを生み出し、高い評価を得ました。

初演後も、1971年と1998年にブロードウェイで復活上演されました。これらの再演は多くのファンに愛されましたが、残念ながら商業的な成功には繋がりませんでした。特に1998年版は、夏季にセントラル・パークのデラコート劇場での野外公演で始まりましたが、その後の屋内劇場での上演は、批評家から精彩を欠くとの評を受けることもありました。しかし、タクシー運転手役を演じたリー・デラリアは、そのパフォーマンス、特に楽曲「I Can Cook, Too」で絶賛されました。

舞台上演だけでなく、コンサート形式でも上演されています。1992年には、マイケル・ティルソン・トーマスが指揮するロンドン交響楽団によるコンサート版が上演され、オペラやミュージカル界のスターが出演しました。この公演はドイツ・グラモフォンによりCDやビデオとしてリリースされ、フレデリカ・フォン・シュターデ、トーマス・ハンプソン、タイン・デイリー、クレオ・レーン、デヴィッド・ギャリソンらが参加しました。コムデンとグリーン自身もナレーターとして出演しています。この録音は、様々な舞台バージョンの要素を取り入れた構成となっています。トーマスは1996年にも、サンフランシスコ交響楽団と共にこのコンサート版を再演しています。

なお、本作の代表曲の一つであり、映画版でも使用された「ニューヨーク・ニューヨーク」は、レナード・バーンスタイン作曲の楽曲ですが、1970年代にフランク・シナトラが歌って世界的ヒットとなった同名の楽曲（通称「テーマ・フロム・ニューヨーク・ニューヨーク」）とは全く別の曲ですので、混同しないようご注意ください。

あらすじ

物語の舞台は第二次世界大戦下のニューヨークです。アメリカ海軍に所属する3人の若い水兵、ゲイビー、チップ、オジーは、24時間だけニューヨークに上陸する許可を得ます。彼らはこの限られた時間の中で、それぞれの運命の女性と出会い、恋に落ち、大都会ニューヨークで様々な騒動や冒険を繰り広げます。しかし、楽しい時間はあっという間に過ぎ、朝になれば彼らは船に戻り、戦争という不確かな未来へと旅立たなければならないという現実が、物語に切ない影を落とします。

映画『踊る大紐育』

ミュージカルの成功を受け、1949年にはメトロ・ゴールドウィン・メイヤー（MGM）によって映画化されました。邦題は『踊る大紐育』（原題：On The Town）です。ただし、1940年公開の同種の映画『踊るニュウ・ヨーク』とは関連がありません。

映画化にあたっては、オリジナルの舞台版から脚本と音楽が大幅に変更されました。プロデューサーのアーサー・フリードは、バーンスタインの楽曲が当時の一般観客には難解すぎると判断し、その多くをロジャー・エデンスや、舞台版の脚本・歌詞を手がけたコムデンとグリーンによる新たな楽曲に差し替えました。また、舞台版に存在した、戦地へ向かう若者たちの間に漂う哀愁や儚さといったペーソスは後退し、代わりに若者の無邪気さや海軍への明るい賛美が前面に出た、陽気でパワフルな作品となりました。

監督は、主演も兼任したジーン・ケリーとスタンリー・ドーネンが共同で務めました。この映画の大きな特徴の一つは、当時のミュージカル映画としては画期的だった、スタジオ撮影と実際のニューヨーク市内でのロケーション撮影を組み合わせた手法です。ジーン・ケリー自身も、印象的なシーンのいくつかが実際に街中で撮影されたことを語っています。

キャスト面では、舞台版でブランヒルドのルームメイトを演じたアリス・ピアースが映画でも同じ役で出演しています。しかし、舞台版に登場するクレアの婚約者ピトキンなど、一部のキャラクターは映画には登場しません。

舞台版からの大きな変更にもかかわらず、この都会的で躍動感あふれるミュージカル映画は、公開後すぐに観客に受け入れられ、大ヒットとなりました。1939年以来MGMミュージカルを牽引してきたプロデューサー、アーサー・フリードは、『踊る大紐育』の成功によってその全盛期を迎え、その後も『雨に唄えば』をはじめとする数々の傑作ミュージカル映画を世に送り出すことになります。

本作の製作スタッフは、同年春に公開された映画『私を野球につれてって』とほぼ同じであり、主要キャストもジーン・ケリー、フランク・シナトラ、ジェールス・マンシン、ベティー・ギャレットと、『私を野球につれてって』からの継続が多く見られます。特にベティー・ギャレットは、『私を野球につれてって』でもフランク・シナトラの恋人役を演じていました。

続編

1955年には、事実上の続編となる映画『いつも上天気』が公開されています。

日本での上演

『オン・ザ・タウン』は日本でも度々上演されています。

2014年版: 男性アイドルグループ「20th Century」（坂本昌行、長野博、井ノ原快彦）の主演で上演されました。2014年9月から10月にかけて、青山劇場とオリックス劇場で公演が行われ、ビル・バーンズが演出・振付、G2が翻訳・訳詞を担当しました。
2019年版: 宝塚歌劇団月組によって上演されました。主演は珠城りょうと美園さくらで、東京国際フォーラムでの公演（2019年1月6日～20日）は、二人のトップコンビとしての記念すべきお披露目公演となりました。その後、梅田芸術劇場メインホールでも上演されました（2019年7月27日～8月12日）。潤色・演出は野口幸作が手がけています。

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