オーギュスタン・ティエリ

ジャック・ニコラス・オーギュスタン・ティエリ

ジャック・ニコラス・オーギュスタン・ティエリ（1795年5月10日 - 1856年5月22日）は、フランスのブロワ出身の著名な歴史家であり、ジャーナリストです。日本では「ティエリー」として知られ、彼の業績はフランスロマン主義の歴史学において評価されています。

ティエリは、フランス復古王政時代における重要な歴史家の一人として、ジュール・ミシュレと並ぶ存在です。彼は、フランス史やメロヴィング朝の歴史に関する研究を特に得意とし、多くの人に影響を与えました。兄のアメデ・シモン・ドミニク・ティエリもまた歴史家であり、ティエリ家は歴史研究において注目される存在でした。

生涯と業績

ティエリは1795年、フランス第一共和政下のブロワに生まれました。1811年にエコール・ノルマル（高等師範学校）に入学し、学業を続けました。1813年には芸術の学士号と芸術科学の学士号を取得し、その後コンピエーニュで人文科学を教える教授となりました。しかし、すぐにパリに戻りました。

在学中、ティエリは社会主義思想家アンリ・ド・サン＝シモンの影響を受け、彼の秘書を務めました。その間に自由主義に関する新聞記事も執筆し、早くから社会運動に参加しました。しかし、フランス復古王政の反動を受け、次第に歴史学に重点を置くようになりました。

1825年、彼の代表作のひとつ『ノルマン人によるイギリス征服』が発表され、その明快な文体と体系的な叙述が高く評価されました。さらに、1827年には『フランス史への公開状』を発表し、文献学派に対する反発を示しました。この時期には、政治家フランソワ・ピエール・ギヨーム・ギゾーとの関係を深め、自由主義の支持者として活動しました。

1830年のフランス7月革命の後、ティエリは一時政府に参加しますが、1832年には再び書斎に戻り、歴史研究に没頭します。1833年には彼の主著『メロヴィング王朝史話』を発表し、金沢誠はこの作品を「フランス国民の必読書」と位置付けています。さらに、1840年には『フランス史に関するいくつかの考察』を、1850年には『第三身分の歴史に関する試論』を著しました。

ティエリは、1856年5月22日にパリで亡くなり、モンパルナス墓地に埋葬されました。彼の業績は、多くの後継者たちに影響を与え続け、フランスの歴史研究において重要な位置を占めています。また、彼の主著『メロヴィング王朝史話』は日本でも小島輝正によって翻訳され、岩波書店から出版されています。ティエリの研究は、フランスの歴史的な理解を深める上で欠かせないものとなっています。

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