オースチン装甲車

オースチン装甲車概説

オースチン装甲車（Austin Armoured Car）は、第一次世界大戦中にイギリスのオースチン社が開発した装輪の装甲車です。この車両は、もともとロシア帝国からの発注を受けて製造され、実戦ではロシア、イギリス、日本など多くの国で使用されました。

開発の背景

オースチン装甲車は、1914年の第一次世界大戦勃発直後にロシア帝国の要請により開発が開始されました。ロシアは装甲車部隊を編成する方針を決定しましたが、自国内での量産が困難だったため、国外に発注しました。これに応じてオースチン社は、ロシアの要求に基づいて装甲車1型を開発しました。

装甲車1型は、乗用車を基にしたもので、マキシム機関銃を装備した2つの銃塔を持っていました。1914年9月29日にロシアから48両の発注があり、当時の価格は1両あたり1150ポンドでした。しかし、実戦に投入された結果、装甲の脆弱性が判明し、改良が求められました。

グレードアップと生産の変遷

初期型の脆弱な装甲を改善した結果、重量が増加し走行性能が低下しました。そのため、1915年3月には新たに2型の開発が行われ、60両が発注されることになります。新型は大馬力のトラックを原型としており、装甲強化が施されていますが、後部ドアの廃止に対する運用部隊からの不満もあり、後に改修が行われました。

1916年には、さらに後部運転席を追加した3型が登場し、1917年にはさらに改良が進んだ1918年型が計画されますが、ロシア革命の影響でこの型はロシアには輸出されることはありませんでした。また、同年にはロシア国内でもオースチン装甲車の生産を始め、プチロフ型として知られる車両が製造されました。

運用の実態

オースチン装甲車は、ロシア帝国陸軍が到着させた際、それを使用して複数の機関銃自動車小隊を編成しました。これにより、戦局に応じた柔軟な運用が可能になりました。1916年までの経験を踏まえ、より大規模な装甲車部隊が求められるようになり、装甲自動車大隊が組織されました。これらは主に連隊や師団に配属され、戦闘に従事しました。

ロシア内戦の際、各陣営がオースチン装甲車を利用し、中でも赤軍が多くの車両を保有していました。1921年には、赤軍が約110両のオースチン装甲車を運用しており、ポーランド・ソビエト戦争にも投入されました。

他国での使用

オースチン装甲車は、ロシアだけでなくイギリス、日本、ポーランド、フィンランド、エストニア、ラトビアなどでも使用されました。イギリスでは、1918年型をホッチキスM1914機関銃に改造して使用し、アイルランド独立戦争などでも見られました。日本では1918年型を少数輸入し、シベリア出兵で活用されました。

現存するオースチン装甲車

現在、サンクトペテルブルクにある博物館にはオースチン・プチロフ型の装甲車が保存展示されており、歴史的価値のある車両として注目されています。特にレーニンの演説台として使用されたものとされる車両があり、その影響も感じられます。

まとめ

第一次世界大戦中に開発されたオースチン装甲車は、その独特な設計と多様な運用により、各国で戦局に重要な役割を果たしました。その履歴や関連する国との関わりを考察することで、戦争とその周辺の歴史を理解する手がかりとなります。

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