オートハープ

オートハープ：コードで奏でるアメリカンフォークの調べ

オートハープは、複数のコードバーを備えた独特の弦楽器です。名前こそ「ハープ」とついていますが、実際にはツィターに分類され、「コードツィター」と呼ばれることもあります。その最大の特徴は、コードバーと呼ばれるボタンを押すことで、特定の和音を構成する弦だけを残し、他の弦の振動を止める（ミュートする）機構にあります。これにより、誰でも簡単に美しい和音を奏でることができます。

もともと「オートハープ」という名称は、オスカー・シュミット社の商標でしたが、現在では一般名詞として広く使われています。

オートハープの魅力

アメリカでは、ブルーグラスやフォーク音楽の楽器として親しまれてきたオートハープ。特に、カーター・ファミリーのメイベル・カーターが愛用したことで広く知られるようになりました。比較的簡単にリズム楽器として演奏を始められる一方で、メロディー楽器としての奥深さも持ち合わせており、熟練した演奏者には大きなやりがいをもたらします。

ペンシルベニア州ニューポートで開催されるマウンテンローレル・オートハープ・ギャザリングをはじめ、各地でオートハープのイベントが開催され、最新の楽器や演奏技術が競い合われています。

現在のオートハープは、36本または37本の弦を持つものが一般的ですが、中には48本もの弦を持つものも存在します。調律は全音階（ダイアトニック）または半音階（クロマチック）で行われ、現代の演奏家はメロディーを奏でる能力を追求しています。ダイアトニックの演奏者は、個々の弦を正確にピッキングしながらコードバーを操作する「オープンコード奏法」を駆使し、ヴァイオリン曲を驚くほどの速さで演奏することもあります。

ロック・ポップスの世界では、1960年代にラヴィン・スプーンフルのジョン・セバスチャンが使用したことで知られています。

オートハープの歴史

オートハープの起源には諸説ありますが、1882年にフィラデルフィアのドイツ移民、チャールズ・F・ツィンマーマンが取得した特許US 257808がその一つです。この特許は、演奏中に特定の弦の音を消すメカニズムに関するもので、彼はこの発明を「オートハープ」と名付けました。ただし、この初期のオートハープは、左右対称の形状で、弦に対して水平にコードバーが動くという点で、現在のオートハープとは異なっていました。

今日演奏されているオートハープに最も近い楽器は、ドイツのマルクノイキルヒェンのカール・アウグスト・グッターが製作した「Volkszither」と呼ばれるモデルです。グッターは1883年から1884年頃にイギリスで特許を取得しました。ツィンマーマンはドイツ訪問後、1885年にグッターのデザインの製造を開始しましたが、自身の設計特許と覚えやすい名前も使用しました。グッターの楽器があまりにも人気になったため、ツィンマーマンが発明者として誤解されることもありました。

商標を巡る動き

「オートハープ」という名称は、1926年に登録商標となりましたが、現在ではU.S. Music Corporation（オスカー・シュミット事業部）がその権利を主張しています。しかし、アメリカ特許商標庁の登録では、「様式化された文字、単語、数字」のみが権利の対象となっており、名称自体は一般名称化しています。このことは、ジョージ・オーシーとの訴訟において、オスカー・シュミット社が「Autoharp」という単語の様式化されたレタリングの所有権のみを主張できたことからも明らかです。その結果、「Autoharp Quarterly」のような雑誌は一般的な意味で「Autoharp」という単語を使用でき、オーシー製の楽器も「Dulciharp」ではなく「autoharp」として販売できるようになりました。

オートハープの構造

オートハープの胴体は、通常、長方形の角を一つ切り取った台形で、木製です。表面板（トップ）は、単板または合板で、サウンドホールを備えているものが多く、円形のものが一般的ですが、個人製作家によるものでは様々な形状が見られます。

胴体内部には、複数の木材を積層したフレームがあり、ピアノやツィターと同様のチューニングピンを打ち込むためのピンブロックが配置されています。ピンブロックの反対側には、金属製のヒッチピンまたは弦のエンドボールを差し込む溝付きの金属アンカーがあります。

弦の真上には、プラスチック、木、または金属製のコードバーがあり、弦に接する面にはフェルトまたは発泡体のミュート用パッドが取り付けられています。コードバーの上部にはボタンがあり、コードバーの両端にはスプリングが配置され、押し下げられた状態から開放される際にコードバーを押し戻します。

ボタンには、コードバーを押し下げた際にミュートされずに残る弦によって構成される和音の名前が記されています。

楽器の背面には、通常、木製、プラスチック製、またはゴム製の3本の「足」が付いており、これはオートハープが元々机の上で演奏されていた名残です。

弦は、コードバーの下を通り、アンカーまたはヒッチピンとチューニングピンの間で表面板と平行に張られています。

現代のオートハープは、ほとんどの場合36弦ですが、47弦や48弦のモデルも存在します。弦は、多くの場合、不完全なクロマチックに調律されますが、ダイアトニックまたは完全なクロマチックのスケールに変更されることもあります。標準モデルには、12、15、21本のコードバーがあり、メジャー、マイナー、ドミナント7thコードを選択できます。これらの配置は、歴史的または体系的な理由に基づいています。また、ダイアトニックの1キー、2キー、または3キーのモデル、和音の数が少ないモデルや追加和音があるモデル、弦の並びが通常と逆なモデルなど、様々な特殊モデルも生産されています。

オートハープの音域

音域は弦の数と調律によって決まります。標準的な36弦のクロマチック・オートハープの音域は、F2からC6までの3½オクターブです。ただし、完全なクロマチックチューニングには44本の弦が必要となるため、この範囲内では完全にクロマチックにはなりません。

演奏方法

当初、オートハープはコンサート・ツィターのように卓上に平置きし、左手でコード・ボタンを押下し、右手にはピックを持ち、コードバーの下側の狭い範囲で複数の弦を弾いて和音を鳴らしていました。しかし、新たなテクニックが開発され、最近の奏者はメロディーを演奏することもできます。例えば、ダイアトニック・オートハープの奏者は、個々の弦を弾きながらコードバーを操作するオープンコード奏法で曲を演奏することができます。

著名な演奏家

メイベル・カーター
ブライアン・バウアーズ
キルビー・スノウ
ジョン・セバスチャン

その他にも、ジャニス・ジョプリン、マイク・シーガー、コリーヌ・ベイリー・レイなど、様々なジャンルのアーティストがオートハープを使用しています。

日本におけるオートハープ

日本では、五つの赤い風船の西岡たかしが「遠い世界に」でオートハープを演奏したことで知られています。また、山下達郎も「世界の果てまで」でオートハープを使用しています。

製造メーカー

東海楽器製造（クロマハープ）
アリア（コードハープ）
* オスカー・シュミット社（オートハープ）

近年では、個人製作家によるオートハープも存在し、独自の音色やデザインが追求されています。

オートハープは、その独特な構造と美しい音色で、多くの音楽家や愛好家を魅了し続けています。

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