オーベンロー

オーベンロー（Åbenrå）

オーベンローはデンマーク南部に位置し、南デンマーク地域の重要な町です。この町は小ベルト海峡に面したオーベンロー湾の奥にあり、北には62km離れたドイツのシュレースヴィヒがあります。2022年の時点での人口は16,401人で、町の名は「ひらけた浜」という意味を持っています。オーベンロー市はこの地域の行政の中心にもなっています。

歴史的背景

オーベンローの歴史は中世初期に遡ります。当初は司教の城を中心に発展し、1240年には商業の町としての権利を認められました。この時期には、漁業とホップの生産で知られるようになります。

1560年から1721年までの間は、ホルシュタイン＝ゴットルプ家の支配下に置かれ、町はその影響を受けました。1750年代から1864年にかけては、地中海や中国、南アメリカ、オーストラリアとの貿易が活発になり、オーベンローは繁栄を迎えました。特に大型船が入港できる良港を持っていたため、コペンハーゲンやフレンスブルクに次ぐデンマーク第三の商船団を保有し、造船所も多く、良質な船を作ることで名を馳せました。中でも1857年には、リバプールからサンフランシスコまでを106日で航海したクリッパー船「Cimber」が有名です。漁業や多くの工場も町の発展に寄与し、人口増加を促しました。

しかし、1864年には第二次シュレースヴィヒ＝ホルシュタイン戦争の結果、オーベンローはプロイセンに編入され、その後北ドイツ連邦を経て1871年にはドイツ帝国の一部となりました。1920年にはシュレースヴィヒ国民投票が行われ、オーベンローの住民の55.1%がドイツ残留を希望しましたが、北シュレースヴィヒはデンマークに割譲されることとなりました。

1948年にはデンマーク語の正書法が改正され、地名表記が「Aa」から「Å」に統一されたものの、オーベンローではその変更に対する抵抗運動が起こり、町の住民の多くは「Aa」表記を今でも使用しています。デンマーク語委員会は「Åbenrå」を推奨していますが、町の伝統を重んじる声も多いようです。

現状と産業

オーベンローには重要な港湾があり、深さ7.5mの航行可能な港を有しています。また、マルクーセン社によるオルガン製造や機械加工など、さまざまな産業が展開されています。さらに、デンマーク放送協会もオーベンローに事務所を構えており、地域の情報発信にも寄与しています。町にはドイツ人のコミュニティも存在し、ドイツ語の新聞「Der Nordschleswiger」も発行されています。

加えて、オーベンローには1300年代に建設された聖ニコライ教会や、マルグレーテ1世によるブルンズルンズ城など、歴史的な建物が点在しており、観光地としての魅力も兼ね備えています。近くにはエリーゼンルンズという海水浴場もあり、地域の人々や観光客に親しまれています。

教育と交流

教育面では、南デンマーク大学のキャンパスも持ち、地域の学術的な拠点となっています。

オーベンローは他の市町との国際交流にも積極的であり、姉妹都市にはフィンランドのロホヤやアイスランドのスカガストュルンド、ノルウェーのホーネフォス、スウェーデンのベクショー、ドイツのカルテンキルヒェンが含まれています。これにより、多文化交流が進み、さまざまな視点での理解が深まることが期待されています。

オーベンローは歴史的背景を持ちながらも、現代においても様々な産業が栄え、国際的な交流を通じて多様性が育まれている町です。

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