オーロラになれなかった人のために

スピッツのミニアルバム『オーロラになれなかった人のために』

1992年4月25日にポリドールからリリースされた、スピッツのミニアルバム『オーロラになれなかった人のために』は、バンドの音楽的な幅を広げる意欲作として企画されました。前作『名前をつけてやる』に収録された「魔女旅に出る」でオーケストレーションを担当した長谷川智樹氏を共同アレンジャーに迎え、新たなサウンドに挑戦しています。

草野マサムネは、長谷川氏のアレンジを基にメンバーのアイデアを加え、楽曲全体をドラマのように構成することを意識したと語っています。2002年には、ロサンゼルスのエンジニア、スティーヴン・マーカソンによるリマスタリングが施され再リリースされました。この再発盤には、リットーミュージックの國崎晋による詳細なライナーノーツが封入されており、オリジナル盤は生産を終了しました。また、ブックレットの封入ミスも一部存在し、文字が縦組みであるため、歌詞カードが右開きになることで、ブックレットをケースに入れる向きが通常と逆になっているものがあります。

収録曲は、全5曲で、それぞれの楽曲に異なる魅力があります。

収録曲

1. 魔法
アルバムの序曲として最後に制作された楽曲で、リズムアレンジはスピッツが担当。様々な楽器が使用され、楽曲の世界観を彩っています。

2. 田舎の生活
5拍子で始まりサビで4拍子に切り替わるユニークな構成で、ストリングス、マリンバ、アルペジオが特徴的。LOST IN TIMEによるカバーや、アニメ『ハチミツとクローバーII』の挿入歌としても使用されました。歌詞は、起承転結のあるストーリーをテーマに制作され、岐阜県中津川市付知町の付知川流域がモデルになったとされています。

3. ナイフ
スピッツのオリジナル曲としては最も演奏時間が長い楽曲。こちらも「田舎の生活」と同様に、起承転結のある歌詞が特徴で、歌詞中の「20号」というフレーズは、歌詞カードで国道標識を模した表記がされています。2010年には、SPITZ JAMBOREE TOUR 2010でのライブ音源がシングル「シロクマ/ビギナー」のカップリングに収録されました。

4. 海ねこ
「魔法」同様にリズムアレンジはスピッツが担当。イントロや間奏ではホーンセクションが活躍しています。独特なメロディーラインが印象的な楽曲です。

5. 涙
メンバーの演奏はなく、弦楽四重奏と草野マサムネのボーカルで構成されたバラード。アニメ『ハチミツとクローバー』の挿入歌としても使用されました。アマチュア時代に三輪テツヤとの共作で制作されたパンクナンバーが原曲ですが、大幅にアレンジされています。

アナログ盤（非売品）

このミニアルバムには、10インチのアナログ盤も存在します。1997年にリリースされたSpitz Analog Disc Collectionでは、1stアルバムから7thアルバムまでの7枚のアナログ盤を購入し、帯についている応募券でアナログ盤収納ボックスがプレゼントされる企画がありました。その際、さらに抽選で500名にはこのミニアルバムのアナログ盤がプレゼントされました。

また、歌詞カードの裏面には、メンバーそれぞれが自筆で「◯◯になれなかった人のために」（◯◯にはメンバーそれぞれ別の言葉が入る）というタイトルのミニエッセイを寄稿しています。

参加ミュージシャン

草野マサムネ：Vocal
三輪テツヤ：Guitars
田村明浩：Bass, Backing Vocal
﨑山龍男：Drums, Percussion, Backing Vocal

魔法

ライオン・メリィ：Acoustic Piano, Hammond Organ
新谷祥子：Timpani
ERIC MIYASHIRO, 中澤健次：Trumpet
鍵和田道男, 渡辺良二：Tromborn
高野哲夫, 飯笹浩二：French horn
スピッツ：Rhythm Arrangement

田舎の生活

新谷祥子：Marimba, Glockenspiel
加藤 JOE STRINGS GROUP：Strings

ナイフ

ライオン・メリィ：Keyboard, Synthesizer
加藤 JOE STRINGS GROUP：Strings
山川恵子：Harp

海ねこ

ライオン・メリィ：Hammond Organ
ERIC MIYASHIRO, 中澤健次：Trumpet
鍵和田道男：Tromborn
高野正幹, 上里稔：Tenor Saxophone
吉田治：Baritone Saxophone
スピッツ：Rhythm Arrangement

涙

ライオン・メリィ：Cembalo
加藤 JOE STRINGS GROUP：Strings
* 山川恵子：Harp

まとめ

『オーロラになれなかった人のために』は、スピッツの音楽的な実験精神が詰まった作品であり、その後の音楽活動にも大きな影響を与えた重要な一枚と言えるでしょう。このミニアルバムは、バンドの多様な表現力と、長谷川智樹氏との共同作業によって生まれた、より深みのあるサウンドを楽しむことができるでしょう。

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