カイゼリン・ウント・ケーニギン・マリア・テレジア (装甲巡洋艦)

カイゼリン・ウント・ケーニギン・マリア・テレジア (SMS Kaiserin und Königin Maria Theresia)

カイゼリン・ウント・ケーニギン・マリア・テレジアは、オーストリア＝ハンガリー帝国海軍で初めて竣工した装甲巡洋艦であり、他に同型艦を持たない独自の存在です。艦名は18世紀のハプスブルク家の皇后・女王マリア・テレジアに由来します。

建造の背景と設計

本艦は、フランス海軍が「デュピュイ・ド・ローム」を就役させた影響を受けており、同等の設計コンセプトに基づいて建造されました。その外観は、当時の防護巡洋艦「カイザー・フランツ・ヨーゼフ1世級」を拡大した形状をしています。艦の建造費用は約750万クローネでした。

船体形状

アドリア海での運用を主とするため、この艦は比較的低い乾舷を持つ平甲板型の船体を採用しました。艦首には衝角が装備されており、艦の前後にはそれぞれ24cmの単装主砲が設置されています。また、艦橋を中央に配置し、二本のミリタリー・マストと二つの煙突を持つ対称的なデザインです。

武装配置

艦の武装は、艦首尾方向に24cm砲1門と15cm砲4門、舷側方向にはお互いに向かい合う24cm砲2門と15cm砲4門が指向できるように配置されています。副砲は各部に装備され、舷側のケースメイト部には15cm副砲を各1基、その他に8基が搭載されました。これにより、攻撃の柔軟性が高まりました。

兵装の詳細

主砲

主砲には、クルップ社製の24cm（35口径）砲が採用されており、最大射程は13,000mです。後にこの主砲はシュコダ社製の19cm（42口径）砲に換装され、射程は20,000mに達しました。

副砲

副砲としては、クルップ製の15cm（35口径）砲を搭載し、各砲の射界を確保するために設置方法に工夫が施されています。これにより、艦の戦闘能力が強化されました。

艦歴

本艦は1895年にドイツのキール運河開通式典に出席し、その後も様々な任務に派遣されました。特に1898年の米西戦争では、キューバに自国民を保護するために派遣され、戦闘の際にアメリカ艦から誤認される危険もありました。また、義和団の乱においても自国民の保護のために活動しました。

艦は1906年と1909年から1910年にかけて近代化改装が行われ、その後は地中海への派遣任務が続きましたが、老朽化が進んだため、1914年からは港湾警備艦として使用されるようになりました。1917年には武装が撤去され、さらに第一次世界大戦が終結した後、1920年に解体処分されました。

まとめ

カイゼリン・ウント・ケーニギン・マリア・テレジアは、オーストリア＝ハンガリー帝国海軍の象徴的な艦艇として、その設計の特色や多様な任務に就いた歴史において重要な役割を果たしました。その存在は、艦艇の技術の進歩や国際的な海洋戦略における変遷を反映しています。

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