カインタ

カインタ市（フィリピン語: Bayan ng Cainta）は、フィリピン共和国カラバルソン地方リサール州に位置する都市です。その歴史は古く、1571年に設立されたフィリピン最古の都市の一つとして知られています。カインタ市は、マニラ首都圏とリサール州の境界に位置し、首都圏の拡大とともに市域も拡大してきました。現在では、リサール州カルドナの西部まで市域が広がっています。

2010年の国勢調査によると、カインタ市の人口は約31.2万人であり、人口・経済規模ともにフィリピン最大の町となっています。しかし、カインタ市はパシッグ市、タイタイ市、アンティポロ市との間で領土問題を抱えており、その境界線が明確でない地域も存在します。

地形

カインタ市は、北にマリキナ市とアンティポロ市、西にパシッグ市、東から南にかけてタイタイ市に隣接しています。市内にはマリキナ川が流れ、地形的には10%が丘陵地で、残りの90%が居住地域と産業地域となっています。リサール州内で最も多くの川や流れがある地域です。

歴史

スペイン植民地時代

1571年、カインタ村はスペイン軍の攻撃を受けました（カインタの戦い）。ミゲル・ロペス・デ・レガスピはカインタとタイタイの征服を決定し、甥のサルセドに遠征を命じました。サルセド率いる軍勢は、ガレオン船と小型船、スペイン兵、ビサヤ人の兵士で構成されていました。カインタ村の首長ガトゥ・マイタンは、侵略者に対し「カインタの民は臆病ではない。死ぬまでこの村を防衛する」と宣言しました。

カインタ村は、要塞化された上に、タイタイ村の民も援護に駆けつけました。2つの村は、ラ・ラグナから流れ込む川沿いの平地に位置しており、川は2つに分かれ、竹藪の中で合流していました。竹藪はリアナで結ばれ壁となり、水堀まで造られていました。川沿いには見張り台や大砲が設置され、弓や剣で武装した兵士が守っていました。

サルセドは、アントニオ・デ・カルヴァジャル少尉にカインタへの侵入経路を調査させました。カルヴァジャルは負傷しながらも、ラ・ラグナ側のアロヨが弱点であると報告しました。サルセドは、ガレオン船の舳先をモルタルで補強し、攻撃作戦を立案しました。

作戦は以下の通りでした。

1. サルセド軍が銃撃で合図する。
2. カルヴァジャル軍が船で川から侵入し、砦や家を攻撃する。
3. サルセド軍がアロヨの壁から侵入する。
4. 町の征服が完了したら、サルセド軍が喇叭を鳴らす。
5. 喇叭が聞こえたら銃撃を止める。

サルセド軍はアロヨに到着しましたが、カインタ兵の激しい抵抗に遭い、一旦撤退しました。その後、サルセドは砦の守りが薄い箇所から上陸に成功し、町を見下ろせる場所を占領しました。しかし、カインタ兵は勇猛に反撃し、船を退けました。その頃、カルヴァジャル軍はガレオン船から砦や家を砲撃しており、町に侵入した事に気づいたカインタ兵は町の中心に撤退しました。サルセド軍は再攻撃を行い、スペイン国旗を掲げて町を制圧しました。村長とカインタの男達は降伏よりも死を選びました。

カインタ村は11月30日にスペイン軍に敗北し、イエズス会の管轄下でタイタイに編入されました。その後、アウグスティヌス主義者の下でパシッグに編入されました。1696年にイエズス会の管轄に戻され、1715年にカインタ教会が完成しました。1727年には、「我らの光の淑女」聖母像がイタリアから運ばれました。1760年、カインタは独立した町となりました。

フィリピン第一共和国

1899年3月16日、エミリオ・アギナルド（フィリピン初代大統領）はエセキエル・アンピルにカインタ解放を命じました。しかし、アメリカ軍がカインタに到着し、フィリピン軍を撤退させました。アンピルは町を焼き、アメリカ兵を殺傷しましたが、フィリピン人にも多くの死傷者が出ました。

カインタ市長と前カティプナン特別職員は、カインタ住民に降伏を提案しましたが、アンピルは逃走しました。1902年3月3日、アメリカの新聞は、武装したゲリラがアンピル市長を捕らえたと伝えました。アンピルは脱出に成功し、パシッグからの援軍により戦争を生き延びました。

アメリカ植民地時代

1913年、カインタはアンゴノ、タイタイと合併しましたが、後に分離しました。カインタを含むリサール州には14の自治体がありました。

第二次世界大戦

1942年、日本軍がカインタを占領し、ゲリラが抵抗を続けました。カインタ教会や「我らの光の淑女」は、日本軍とアメリカ・フィリピン連合軍の爆撃で破壊されました。その後、地震や台風もカインタを襲いました。現在では、大きく修復された外壁以外に、古い教会を残すものはありません。

1945年、フィリピン軍はゲリラとともにカインタを解放しましたが、その後アメリカに再占領されました。カインタにおける戦争での犠牲者は、住民が3810人死亡、1.24万人が負傷、ゲリラが200人以上死亡、700人が負傷、日本軍が1.5万人死亡、3.6万人負傷、3400人が捕虜となっています。

フィリピン独立後

1968年2月25日、地元住民の助けによって修復された教会が完成し、マニラ大司教が祝福しました。2003年後半、前市長のニカノル・フェリックスはカインタの市への移行を承認しましたが、リサール州政府は先に隣接3市との領土問題を解決するよう指示しました。2010年1月、リサール州知事はカインタとタイタイについて、市への移行を支持しました。現在はカインタとタイタイを合わせて市にする流れで話し合われています。

宗教

カインタ市では、キリスト教徒が70%を占めています。その他、イグレシア・ニ・クリスト、アン・ダティン・ダーン、アグリパヤン、イエスは神などのキリスト教系宗派や、イスラム教徒（10%）、仏教徒（3%）、シク教徒（2%）などがいます。

言語

カインタ市では、タガログ語が主に使われています。

祖先

1762年から1763年のイギリス植民地時代に、インド人傭兵のセポイが流入しました。彼らはチェンナイ出身のタミル人で、現地の女性と結婚し、カインタの地に根を下ろしました。

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