カザン聖堂

カザン聖堂：サンクトペテルブルクの壮麗な大聖堂

カザン聖堂（カザン大聖堂、カザン寺院）は、ロシアのサンクトペテルブルクに位置する、ロシア正教会の大聖堂です。ロシア正教会には、同名の聖堂が複数存在しますが、これらは「カザンの生神女」という重要なイコンに由来します。中でも、サンクトペテルブルクのカザン聖堂とモスクワのカザン聖堂がよく知られています。

概要と歴史

サンクトペテルブルクのカザン聖堂は、アンドレイ・ヴォロニーヒンの設計によって建設されました。ヴォロニーヒンは、ローマのサン・ピエトロ大聖堂を手本に設計を行いました。聖堂はネフスキー大通りに面していますが、当初は通りの反対側に建立する計画もあったとされています。ヴォロニーヒンの新古典主義の設計に対し、ロシア正教会側はサン・ピエトロ大聖堂の模倣であると難色を示しましたが、最終的には宮廷によってヴォロニーヒンの設計プランが支持され、1801年に着工、1811年に完成しました。

1812年のナポレオンによるロシア侵略（祖国戦争）の勝利後、カザン聖堂は戦勝記念の建築としての意味を持つようになりました。ロシア軍総司令官ミハイル・クトゥーゾフは死後、この聖堂に安置され、彼の墓にはアレクサンドル・プーシキンの詩が献呈されました。1815年には、ヨーロッパ派遣されたロシア軍将兵が帰国し、鹵獲品である17都市、8要塞の鍵を聖堂に奉納しました。1837年には、ボリス・オルロフスキーによってクトゥーゾフとバルクライ・ド・トーリ両元帥の青銅像が聖堂の両翼端に建立されました。

1876年、カザン聖堂の前でロシア史上初のデモが発生しました。しかし、1917年のロシア革命後、聖堂はボリシェヴィキによって閉鎖され、1932年にはソビエト政府によって無神論博物館とされました。ソビエト連邦崩壊後の1996年、聖堂はロシア正教会に返還され、現在はサンクトペテルブルクのロシア正教会の首座教会となっています。

建築

カザン聖堂の最大の特徴は、ネフスキー大通りに面して半円状に弧を描くコリント式の列柱回廊です。聖堂のプランはラテン十字形であり、当初の計画では南側にも列柱による半弧回廊を建設する予定でした。ドームの建設にあたり、ヴォロニーヒンは採光用の天窓を設置し、外側ドームの天井画が自然光によって浮かび上がるように設計しました。

カザン聖堂は、その壮麗な建築と歴史的な背景から、サンクトペテルブルクを訪れる人々にとって必見の観光スポットとなっています。また、ロシア正教会にとっても重要な聖地であり、多くの信者が訪れる場所です。

関連事項

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