カセットブック

カセットブックとは

カセットブックは、1980年代に流行した独自の出版形態です。書籍や雑誌に、音楽、音声、またはコンピュータ用プログラムのデータが記録されたカセットテープを同梱したものを指します。

概要

当時、カセットテープは音楽メディアとして主流であったレコードに比べて、手軽でコストが低いという利点がありました。そのため、多くの自主制作作品がカセットテープで発表されました。特に、カセットマガジンとして発行された『TRA』は、ニュー・ウェイヴ音楽シーンにおいて重要な役割を果たしました。

また、出版社が発行し書店で販売されるカセットブックは、レコード制作における倫理委員会の規制を受けないため、より自由な表現が可能でした。1985年に小学館から発売された佐野元春の『ELECTRIC GARDEN』は、10万部を超える大ヒットとなり、カセットブックとしては異例の成功を収めました。

しかし、1980年代後半になると、音楽メディアの主流はコンパクトディスク（CD）へと移行しました。さらに、書店で販売される朗読テープが「カセットブック」という名称を使用するようになったため、「カセットブックといえば朗読テープ」という認識が広まり、音楽やデータなどを収録したテープを同梱したカセットブックの流行は終焉を迎えました。代表的な作品のいくつかは後にCDで再発されましたが、書籍部分が再録されることはほとんどありませんでした。

書籍とカセットテープの組み合わせは、パソコンブームに乗って流行したディスクマガジンを書店の販路で流通させるためにも利用されました。これらのディスクマガジンも、フロッピーディスクからCD-ROMへと移行し、1990年代半ばには姿を消しました。

代表的な作品

TRA（1982年創刊）：雑誌形態で刊行。立花ハジメ、MELON、安斎肇らが参加。
AVEC PIANO - 坂本龍一（思索社、1983年）
ベトナム伝説 - 遠藤ミチロウ（JICC出版局、1984年）
SCUBA - P-MODEL（JICC出版局、1984年）：平沢進、三浦俊一、有島（神尾）明朗が参加。
マニア・マニエラ - ムーンライダース（冬樹社、1984年）：当時所属レコード会社の判断でお蔵入りとなった音源をカセットブックとして発売。
カルサヴィーナ - 井上鑑（冬樹社、1984年）
花に水 - 細野晴臣（冬樹社、1984年）
観光地楽団 - 矢口博康（冬樹社、1984年）
昨日のつづき - 南佳孝（冬樹社、1984年）
ELECTRIC GARDEN - 佐野元春（小学館、1985年。ISBN 4-09-394111-4）
どてらい奴ら - 町田町蔵from至福団（JICC出版局、1986年）：『SCUBA』と同じく北田が参加。
BECAUSE - 有頂天（JICC出版局、1986年）
マドンナメイトカセット（マドンナ社）：ヌード写真集とモデルの声を録音したカセットがパックされたもの。

関連項目

オーディオブック
ビデオマガジン
ディスクマガジン

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