カチューシャの唄

カチューシャの唄

『カチューシャの唄』は、1914年（大正3年）に発表された日本の歌謡曲であり、同楽曲を題材にした短編映画です。劇団芸術座の公演『復活』の劇中歌として、松井須磨子によって歌われ、爆発的な流行語となりました。

楽曲の解説

この楽曲は、ヨナ抜き音階という伝統的な日本の音楽表現と、リード形式の西洋音楽の手法を取り入れています。歌詞は5番まであり、曲の途中で民謡の囃子言葉のように「ララ」というフレーズが挿入され、全体を引き締める効果を出しています。

作詞は島村抱月と相馬御風の共同名義となっています。1番は島村が作詞し、2番以降は相馬が担当しました。当初、島村が作詞に苦戦していたところ、相馬が引き継いで完成させたというエピソードがあります。中山晋平にとっては、この作品が作曲家として初めて世に出るきっかけとなりました。中山は島村から、学校の唱歌や西洋の賛美歌とは異なる、日本的な俗謡と西洋のリードの中間のような、誰にでも親しまれる旋律を依頼され、試行錯誤の末に「ララ」という合いの手を織り交ぜるアイデアを取り入れ、完成させました。

『復活』の劇中では、松井須磨子が主に歌唱を担当し、感情豊かに歌い上げました。

松井の死後も、この歌は多くの人々に歌い継がれ、平成時代にはソウル・フラワー・モノノケ・サミットがカバー。令和時代にはアイドルグループが開歌-かいか-がカバーするなど、時代を超えて愛されています。

歌詞

カチューシャ　かわいや　わかれのつらさ
せめて淡雪　とけぬ間と
神に願いを（ララ）かけましょうか

カチューシャ　かわいや　わかれのつらさ
今宵ひと夜に　降る雪の
あすは野山の（ララ）路かくせ

カチューシャ　かわいや　わかれのつらさ
せめて又逢う　それまでは
同じ姿で（ララ）いてたもれ

カチューシャ　かわいや　わかれのつらさ
つらいわかれの　涙のひまに
風は野を吹く（ララ）日はくれる

カチューシャ　かわいや　わかれのつらさ
ひろい野原を　とぼとぼと
独り出て行く（ララ）あすの旅

大流行の背景

芸術座による『復活』の上演は、当初は苦戦しましたが、地方公演を重ねるうちに人気を博しました。その背景には、トルストイの思想への関心や、大正時代という新しい時代への期待感がありました。

レコードの発売も、この歌の大流行に大きく貢献しました。当時としては異例の売り上げを記録し、芸術座はレコードを宣伝に活用しました。また、この歌の成功が、芸術座の他の舞台作品における劇中歌の挿入につながり、「ゴンドラの唄」が生まれるきっかけにもなりました。

大衆への影響

楽譜や歌本も広く普及し、学生の間でも大流行しました。しかし、その人気ぶりに、学生に観劇や歌唱を禁じる学校も現れました。

映画

『カチューシャの唄』は、映画作品としても製作されました。日本キネトフォンが製作した短編映画は、松井須磨子が歌う姿を撮影したもので、トーキーの初期の作品として知られています。また、日活向島撮影所も『カチューシャ』という題名の映画を製作し、ヒット作となりました。

知音都市交流

この歌にゆかりのある都市間では、交流が行われています。島村抱月、相馬御風、中山晋平、松井須磨子の出身地である、糸魚川市、長野市、中野市、浜田市が知音都市として交流を深めています。

島根県浜田市金城町では、7時と正午と19時の定時放送でこの曲が使用されています。新潟県糸魚川市でも、冬季に17時の定時放送として使用されています。

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