ゴンドラの唄

ゴンドラの唄

「ゴンドラの唄」は、1915年（大正4年）に発表された日本の歌謡曲です。作詞は吉井勇、作曲は「カチューシャの唄」でも知られる中山晋平が手掛けました。芸術座第5回公演『その前夜』の劇中歌として生まれ、松井須磨子らによって歌われ、大正時代に広く流行しました。

楽曲について

作曲者の中山晋平によれば、母の死後、悲しみに暮れて帰る汽車の中で、歌詞が語りかけてくるように感じられ、汽車の揺れとともに自然と旋律が湧いてきたといいます。歌詞はアンデルセンの『即興詩人』（森鷗外訳）の一節を基にしています。

1915年4月には『読売新聞』にライオン水歯磨の協賛広告が掲載され、歌詞が紹介されました。楽譜は1916年（大正5年）7月にセノオ音楽出版社から出版されています。

歌詞

ゴンドラの唄の歌詞は以下の通りです。

いのち短し 恋せよ乙女

赤き唇 褪せぬ間に

熱き血潮の 冷えぬ間に

明日の月日の ないものを

初出について

長らく不明であった初出は、吉井勇の研究者である細川光洋教授の調査により、総合雑誌「新日本」（1915年4月1日発行）の文芸付録で紹介されたものであると判明しました。現在広まっている歌詞とは異なる部分も存在します。

受容

発表当初は酷評も受け、「カチューシャの唄」ほどの爆発的なヒットには至らなかったとされています。中山晋平は、長旋法（長調）で6拍子のメロディが当時の日本人に受け入れられにくかったのではないかと分析しています。しかし、1920年（大正9年）には大阪で歌われている流行歌のリストに挙げられており、ある程度の人気はあったと考えられます。その後、「カチューシャの唄」と並び、長く歌い継がれる曲となりました。

堀内敬三は『音楽五十年史』の中で、「大正5年末からじりじりと永く流行った」と述べています。

二次使用

黒澤明監督の映画『生きる』（1952年）で、主人公がブランコに乗りながらこの歌を口ずさむシーンは、映画全体の象徴的な場面として知られています。この映画での使用をきっかけに、再び注目を集め、新たな意義づけがなされました。

その他、鈴木清順監督の映画『無鉄砲大将』の主題歌や、アニメ『あしたのジョー』でも使用されています。近年では、2019年公開のドイツ映画『命みじかし、恋せよ乙女』で樹木希林が口ずさむシーンも話題となりました。

カバー

数多くのアーティストによってカバーされています。

参考文献

和田登『いのち短し恋せよ少女：小説中山晋平』総和社、2005年
永嶺重敏『流行歌の誕生：「カチューシャの唄」とその時代』吉川弘文館、2010年
* 相沢直樹『甦る「ゴンドラの唄」：「いのち短し、恋せよ、少女」の誕生と変容』新曜社、2012年

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